『もう…出したいっ』(あるざ流人) 排泄が生み出す小市民的な幸福感、ウンチは心を繋ぐアイテム 

 こんなに排泄だけを愛し続けることができる作者は幸せだなあ~。

 あるざ流人『もう…出したいっ』(メディアックス)は、人にはいろんな幸せがあることを感じさせてくれる短編集である。

 この作品に収録されているのは、ほとんどスカトロ。それもウンチの排泄がメインのものばかりなのである。

 数々のスカトロ作品を描き続けている、あるざ氏であるが、一口にスカトロ作品といっても様々ある。その中でも、あるざ氏はスカトロによる快楽絶頂と、それによって得られる小さな幸せを描くことに情熱を注いできた。

 とりわけ、あるざ氏が本領を発揮するのは、排泄を通じて幸せを得るという展開である。今回の収録作も、排泄による快楽をメインにしたものよりも、幸せ展開をメインにしたもののほうがキラリと光っている。

 収録作の中で「ひきこもり姉と流される妹」は、さすがはあるざ氏と感嘆する作品である。

 何年もジャージ姿で引きこもったまま、部屋から一歩も出ることのない姉。そんな姉の誕生日に、妹はケーキを焼いて、心ばかりのお祝いをしようとする。妹の「子供の頃と間取りあまり変わっていないんだね」というセリフから、2人の間にも長い期間の断絶があったことが窺える。

 ケーキを食べながらも、埋まらない溝にぎこちなさを感じていたところで、妹は姉にトイレはどうしているのかという疑問をぶつける。そこで、姉は待っていましたかとばかりに、ペットボトルにオシッコを排泄する姿を見せつけるのだ。

 まさかと思っていたが、やはりそうだったのかと、若干引き気味の妹。それを見て、姉はさらに見せつけるように「ケーキのお返しに私もプレゼントをあげる」と、目の前で大便をひり出し、手に取って「私の気持ち」と差し出すのである。それも自ら先に「おいしいんだから」と恍惚の表情で口に含みながらだ。

 それを恐る恐る口にした瞬間、妹の意識も急激に転換する。心臓が高鳴り、興奮をしてしまうのである。

 この一種の超展開こそが、あるざ氏の持ち味である。あるざ氏にとって排泄物、それもウンチは媚薬の一種。あるいは、人と人の心を接続する何かとしての役割を持っているのである。ウンチの果たす役割とは、いわば『新世紀エヴァンゲリオン』におけるL.C.Lと同一と考えれば、すんなりと理解できるだろう。

 排泄シーンにおいて、あるざ氏が好むのは、我慢して恥ずかしがっている姿のようである。

 収録作の「開き直ってはいどーぞ!」でも「本当にやらなきゃダメなの」とヒロインが躊躇しているシーンをじっくりと描いているが、やはりその先には、予想だにしなかった登場人物同士の心の合体が完成するのである。

 ひり出した、便所に流すしかない汚物が幸せをもたらすというオンリーワンな展開。幸せなど、どこに転がっているかわかるものではない。
(文=ピーラー・ホラ)

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