『君の名は。』のメガヒットは自主制作の観点でも大快挙! 一方、若手アニメーターの薄給は自主制作の観点でも大問題?


動画:今年の映画祭を賑わせたコマ撮り『あたしだけをみて(トレーラー)』 作者の見里朝希は手描きも得意とするクリエイター

 キャラクター作画の工程に絞ると、目下デジタル作画への移行にともなって原画・動画・仕上げの境目が曖昧になってしまうことが懸念されており、薄給問題の解決を遅らせる一因ともなっている。例えば1カットまるまる原画・動画・仕上げを一括して納品できれば効率もあがるのだが、単にデジタル化しただけでは来たるべくして巡ってきた改善のチャンスが失われてしまう。

 原画・動画・仕上げを一括にする考え方は、CGでのワークフローに倣うもので、CGでのアニメ制作のうち直接キャラクターに関する工程は、モデリング、リギング、アニメーションになる。そこへ手描きにおけるキャラクターの作画工程を当てはめてみると、アニメーションの工程に集約される。CGではモデリングやリギングはもちろん、アニメーションの工程に携わる若手は生活に困窮していない。

 相も変わらずアニメ業界内で「ウチの会社はマシな方」と牽制し合っている間に、CG業界やゲーム業界に若手の有能な人材を取られていく。作画や背景の上手い学生がCG会社やゲーム会社に就職すると、CGも人手が不足しているためにCGを覚えさせられ、ますますハイスペックになっていっている(そもそも奨学金の返済がある場合はアニメ業界を選べない)。

 12月1日に「すげえ新人が入った」との見出しで、はてな匿名ダイアリーにアップされた記事が話題になっていた。アニメーターとしてアニメ業界にいた人物が、ゲーム業界にやってきたという内容である。その新人の何が凄いのかというと、作業環境のスペックの高さと終業時刻の早さに驚いていたというオチだった。真偽はさておき信憑性は高く、これも人材流出の一例だろう。

■作画の工程が改善されず20年が経過 制作費が低迷する中でのコスト配分が課題

1612_makari04.jpg『アニメを3D(サンジゲン)に!』(星海社)

 11月24日に刊行された星海社新書「アニメを3D(サンジゲン)に!」は、サンジゲンの松浦裕暁社長が試行錯誤してきた様が垣間見える良書である。本書では同社が06年に設立されてから今年までの10年だけでなく、松浦社長がCGに巡り合い同社を設立するまでの経緯にも触れられている。松浦社長もまた、90年代後半のCGブームを知る1人であった。

 松浦社長が社員にCG業界並みの給与を支払えるようになったのは今年になってからだという。アニメ業界のワークフローに沿いつつ、その制約の中でCGの待遇を上げていく10年であったようだ。ここまで述べてきてもなお、CGと手描きを分けて考える人もいるだろうが、サンジゲンでも率先してデジタル作画の取り組みが行われていることを留意しておきたい。

DVD BOOK ほしのこえ (アニメ―ジュ ライブラリー VOL.1)

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根っこのところはあまり変わっていないと思うんですよね

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