【実写映画レビュー】本作を「(笑)」付きでディスることこそ、SWファンの礼儀 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

 「10数分のために2時間」。まるでエベレスト登山である。
 エベレスト登山は、たった数人をたった数分間だけ山頂に滞在させるために、何十人ものサポートと数百万円という費用、約2カ月という準備時間を要する。多くの人の手を借りてベースキャンプまで食料や道具を荷上げし、天候を見ながら出発日を虎視眈々とうかがい、いざ出発となれば現地のシェルパ(登山ガイド)にルートを確保してもらい、山頂まで1日で往復できる高度までなんとか到達したらテントを設営し、そこからやっと頂上にアタックするのだ。
 エベレストの登頂成功者はヒーローとして栄光を手にするが、その裏には現地で雇われた多くの熟練シェルパたちの存在がある。当地の気候に精通した彼らが天気を読み、最適なルートを工作・指南し、ガイドとして同行する。そのアシストがなければ、いかに著名登山家といえど山頂に到達するのは難しい。

 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ダース・ベイダーと“例のアノ人”が最後にすべてオイシイところを持っていく。後世に名を残す登山家として、頂を制したのだ。
 いっぽう、名前も残らない多数のシェルパ、いわば無名の戦士にあたるのが、ローグ・ワンの6人(ドロイドのK-2SO含む)である。実際、ラスト10数分のインパクトは、その前2時間を完全に上書きしてしまう。エンドロール後、ローグ・ワンのメンバー全員の名前を間違えずに言える観客が、一体どれほどいるだろうか?

1612_rogue_one_3.jpg(C)2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 そんな「名もなき縁の下の力持ち」を記憶にとどめ、語り部として後世に伝える任務を背負っているのが誰かといえば、会社を早退してまで金曜日の初日に劇場へ行き、終電ギリギリまで飲み屋で感想戦をヒートアップさせる輩どもであろう。ローグ・ワンの面々は、多方面からディスって話題にでもしなければ忘れ去られてしまう。さながら無名のシェルパたちのように。酒を飲みながら「(笑)」つきで本作をディスるのは、むしろファンの礼儀、屈折したリスペクトの証しなのだ。
 そして我々は、今日も喜々として『ローグ・ワン』をディスる。「今どき設計図が物理メディア(っぽい何か)に収められて、倉庫(っぽい何か)に収納ってないよなー」などと。もちろん、最後に「(笑)」を忘れずに。
(文・稲田豊史)

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