織物職人が“堕ちた”アイドルヲタクの世界とは? 話題の映画『堕ちる』レビュー

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 何ごともそうであろうと思うが、ひとつのことを漫然と続けていると、最初の頃の気持ちを忘れてしまいがちである。

 私も、アイドルのライブやイベントに行くとき、毎回テンションが上がるし、楽しいとも思うが、最初はそんなことを意識してはいなかった。

 もう今から30年以上前のことだ。ふとしたことから目にしたアイドルに心惹かれ、いつの間にか雑誌を集めたりCDを聴いたりしていた。そう、まさに気づいたときにはもう“堕ちて”いたのだ。

 久しぶりにそんな気持ちを思いだしたのは、12月17日、渋谷LOFT9で行われた上映会で、村山和也監督の映画『堕ちる』を観たからだ。

 主人公は、無口な織物職人の中年男性。部屋で一人コンビニの弁当を食べているシーンがあることから、独身と思われる。

 そんな彼が、ふとしたことから出会った地下アイドル「めめたん」にハマり、彼女を応援することになる。ライブハウスにも足を踏み入れ、古参のヲタクたちにいろいろ教えてもらいながら、だんだんと自分もヲタクの色に染まっていくのだ。

 彼は、部屋をポスターで埋め尽くし、曲を聴き続ける。見ていて「あぁ、あったなあ、そんな時期」と自分のことを思い出す。

 なんと言ったらいいのだろう。その子のことを考えているだけで、たまらなく幸せで、「いつまでもこの時間が続けばいいのに」などと思ってしまう。

 そして、アイドルにハマっていくと必ずと言っていいほど抱く思い──「彼女のために何かしてあげたい」。彼はその思いに突き動かされるように、めめたんの衣装を(もちろん織物で)作り始める。

 これは、好きなアイドルに誕生日プレゼントをあげたり、ファンレターを書いたりするのと同じ心境だろう。細かなエピソードのひとつひとつが、自分の身にあったことと合致し、面白さがこみ上げてくる。

 もちろん、私はアイドルヲタクなので、その目線でしか見られないが、一般の人が見ても十分楽しめると思う。「ヲタクってこういう風にハマっていくんだ」という視点で見てもいいだろうし、自分が恋に堕ちていく過程と比較してみても面白いだろう。

 村山監督は、制作にあたり、アイドル現場にも足を運びリサーチをしたというが、古参ヲタとの掛け合いや、オフ会の様子など、随所にその成果が活かされている。

1st Love Story<通常盤Aタイプ>

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めめたんはトゥインクルイエロー担当

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