めの『まもなく開演!』徹底的にウダウダするだけの日常系の極北 

 最初に断っておきますが、まったく開演しません。めの『まもなく開演!』(KADOKAWA)。

 舞台は演劇部なのですが、マジで公演は始まらない。第1話で、部活動の発表として行った校内での公演をビデオで観て反省しているだけです。案の定といいますか、公演はボロボロです。そんなダメダメな状況を提示した上で、物語はひたすら日常系として描かれてくのです。日常系なのですが、演劇部なので最初からコアメンバーは7人と多めです。

 やる気はあるし、公演の準備もしているけど、まったく公演が行われる気配はありません。どれくらいやっていないか、過去の部活を舞台にしたマンガを考えると……『行け!稲中卓球部』(講談社)よりもやっていない。『幕張』(集英社)よりは、やっているから、まだマシか……? そんな具合なのであります。

 そして、この作品の特徴としてキャラクターの薄さがあります。それぞれの登場人物が役者や照明、大道具に脚本と役割分担されているのですが、その設定を生かし切れているかは、ちょい疑問です。あとがきでは、作者自身が「最初からこんなにキャラクターが多い作品を描いたのは、はじめてなので大変」と告白しているくらいだから、相当な苦労があるのがうかがえます。

 ただ、作者の意図は別として、このキャラクターの薄さゆえに、女の子たちが、きゃぴきゃぴと学園生活を楽しむ日常系が大好きな読者には、たまらない雰囲気が生まれているのも事実です。

 だって、掲載誌は「コミック電撃だいおうじ」(KADOKAWA)。こんな雑誌を買っている人が、本気の演劇部なんか求めているワケないじゃあないですか。ひたすら、女の子たちがきゃぴきゃぴしていればよいのです。むしろ、それ以外の要素が入ると邪魔なんです。この作品の場合、キャラが薄い上に人数が多いため、読者も個別のキャラを認識するのが大変です。むしろ、認識するのが困難。そのために、より女の子たちの日常だけを楽しむことができるわけなんですね。

 とにかく、ウダウダ以外のなにものでもない、女の子たちの姿。なんで、そんな何も生産性のないもので、楽しめてしまうのでしょう。読んでいるうちに、哲学したくなってくる作品であることは間違いありません。
(文=大居候)

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