小林銅蟲『めしにしましょう』ローストビーフは風呂に放て! どこまで続くか、飯テロネタで……

 小林銅蟲『めしにしましょう』(講談社)は、またまた新手のメシマンガである。

 もう、年に何作品出ているのやらわからぬメシマンガであるが、この作品は女性マンガ家とアシスタントの2人によるダベりとメシだけで展開する。すなわち、マンガ家マンガ要素も兼ね備えたメシマンガというわけである。

 この作者、ウェブで公開された『ねぎ姉さん』で注目された作家であります。ただ、さほどメジャーというワケではない。ところが、驚いたのはウィキペディアの情報。一応、筆者は、原稿を書くにあたって名前程度しかわからぬマンガ家については、ネットで情報を検索するようにしている。その中で、ウィキペディアは信用できないながらも、目を通しておく必要のあるサイトだと思っている。

 で、今回、小林氏のページを見て「うわっ……」と思った。「大学在学中『コミックビーム』に1年間持ち込みを行うも全てボツを喰らう」「アシスタントの多忙さに加え主治医が死去したことが重なりうつ病が悪化、仕事場の階段から飛び降りる」いやいや、知らなかったけど、どこかに出展があるのだろう。その真偽よりも、まだ作品数は少ないのに本人の病気以上に書かれ方が病的な印象。なんか、面倒くさい、サブカルファンがたくさんついていて大変なのだろうと感じさせてくれる。

 でも、この『めしにしましょう』は、面倒くさくはない。小林氏が、『累』(講談社)などの作品がある松浦だるま氏のところでアシスタントをしていた経験をモチーフに物語はつくられている。

 ゆえに、マンガ家とアシスタントの日常にはリアリティ……が、あんまりない。日常部分の会話には、やっぱり、サブカル的なシュールさが漂っている。ただ、驚くのは料理への凝り方である。第1話でつくられる料理は、ローストビーフ。家庭でローストビーフというと炊飯器を用いたりが一般的だが、ここで使われるのは浴槽。風呂に63度くらいの湯をためて肉を投げておけば、3時間ほどでローストビーフが出来上がるというのだ。

 どうだ、目から鱗では有るまいか! しかも、その詳細なレシピを、小林氏は自身のブログで惜しげもなく公開しているのである。ほかにも、めんつゆと片栗粉でつくった「あん」の上に生湯葉で包んだウニをのせる、絹かけ丼とか、出てくる料理がこれまでのメシマンガとは、まったく異なる。

 次々と繰り出されてくる料理の数々に、衝撃を受けると共に、読了後にはすぐに肉を買ってきてしまった。

 小林氏がブログで次々と料理を繰り出しているあたり、創作力は旺盛なのがよくわかった。ただ、筆者は知らなかったけど、この作品は連載開始当初から新たな飯テロ作品のごとく扱われて注目されているらしい。注目されるということは、ネタが切れたらお終いってこと。読者の期待がプレッシャーにならないといいとは思いつつも、マジキチな料理を期待してしまうのも本当だ。
(文=是枝了以)

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