『レイリ』…『寄生獣』『ヒストリエ』の岩明均が原作として戦国時代を描く! 大絶賛相次ぐ、話題の本格時代劇マンガ!

『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)の2015年12月号より連載をスタートした本格戦国時代劇マンガ『レイリ』。『寄生獣』『ヒストリエ』(ともに講談社)などで知られる岩明均が原作、室井大資が作画を務める話題作で、11月にその第1巻&2巻が同時発売された。これがまあ、すこぶる評判がいい。鈴木健也や、とよ田みのるといった同業者もTwitterなどで同作を絶賛しているほどなので、早速その内容を紹介しつつ、レビューしてみる。

 物語の主人公は少女・レイリ。百姓であったレイリ一家は、近くで繰り広げられていた“長篠の戦い”を勝ち抜いた織田軍の輩数名の襲撃をうけ、レイリを守ろうとした両親と弟は首を切り落とされ殺される。そしてレイリもやからに強姦されかけたところを、武田家の家臣・岡部丹波守に救われる。九死に一生を得たレイリは岡部の元で暮らし4年、男性をも凌ぐ剣術を身に着け、岡部の家来衆の中で誰よりも強くなっていた。

 レイリは戦場に行くことを強く望んでいた――主の盾となって戦い、そして死ぬことこそ、レイリが何よりも求めるものである。

 ストーリーは、おおむね史実に基づいて進行、岡部をはじめさまざまな歴史上に実在した人物が登場。1巻の岩明によるあとがきによると、レイリもどうやらマイナーな歴史上の人物をモデルにしているらしい。

 さて、“死にたがりの少女”レイリを語るうえで外せないのが“狂気”。普段は小生意気な少女といった感じなのだが、剣を持てばたとえ稽古でも相手を狂ったように痛めつけるし、戦場にいくことを執拗に懇願し、家族の死によって救われた命をやたらと簡単に捨てようとする。この二面性、そして戦国時代においても異常な死生観が、レイリという主人公の強い印象を存分に読者に植え付けている。

 もっとも岩明は『レイリ』に関して、「キャラクターを描きたい」のではなく、「歴史上のある出来事が書きたい」と語っている。その出来事というのが、冒頭の長篠の戦いから、武田家が滅び“甲州征伐”にいたるまでの約7年間という期間だろう。

『レイリ』は長篠の戦いを前日譚として描き、その4年後から本編は始まっているので、史実に即していえば、武田家滅亡まで残り3年間程度ということになる。この短い期間を、作中でどこまで話を膨らませ、レイリの成長を描き切るのか。

 なお長篠の戦い以後、中央では織田信長が越前侵攻、右近衛大将就任、安土城築城、そして対本願寺、対毛利戦と大張りきり。歴史小説やドラマは、どうしても信長を中心とした多くなりがちで、この年代の甲州を舞台とした物語は意外と少ない。だが、奇しくも今年のNHK大河ドラマ『真田丸』は“甲州征伐”から物語が始まっており、この年代を武田家視点で描く点が珍しくかぶっている。SNSでも「真田丸と時代ちょいかぶってて楽しい」「真田丸では名前しか出てこない武田家が舞台なのがタイムリーで良い」と偶然か狙ったのか評判を上げている。

 気になるのは、史実を元にしたマンガにも関わらず、ストーリーの進行がかなり遅いこと。一つ一つの戦闘シーンの長く、大ゴマが多用されるので、月刊連載だというのに「週刊少年ジャンプ」(集英社)のバトルマンガ並にしか一話で話が進んでいないように感じられてしまう。実際、1巻は幕前&人物紹介、2巻で移動&主君との対面と、展開はゆっくりだ。丁寧といえば丁寧なのだが……。

とはいえ『ヒストリエ』もなかなか物語が進まないし、訓練された岩明均ファンならば問題ないだろう。室井が作画を担当してくれているので、アクションシーンも迫力があって楽しめ、間を十分にとることで、映画でも見ているような臨場感も味わえるのだが。

 同時発売された2巻では日常的なパートもあり、ギャグマンガ家としての顔を持つ室井が、さらに岩明脚本にいい味をつけてくれている。まだ始まったばかりなので大きな展開を見せていないが、ストーリー的には尻上がりにどんどんおもしろくなっていくはず。今後、大ブレイクの可能性がある作品として、注目しといてもいいかもしれない。
(文・白子しろこ)

雪の峠・剣の舞 (KCデラックス アフタヌーン)

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短編だと、昔から時代ものを描いているんですよね

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