富野由悠季「1000万は伊達じゃない」「知られてない作品の話が通じないのが嫌」 誕生日なのに“死に支度”の話も

 その後、「380万円にもならない年収でアニメをやってる人たちを、もっと表に出してほしいんだけれども、出せる方法がない。やっはり箱はある方がいい。年収380万にもならない人たちがそこに行ったら間違いなく仕事がある、そういう受け皿になってほしい」と、立ち消えとなった09年のメディア芸術総合センター構想も引き合いに出した。

1611_tomino4.jpg写真:富野由悠季

「アーティストにも労働者にもなれない人らが集まってくるとどういうことが起こるか、社会的に活気のある場所になってくるだろうと。地域活性していく方向もあるのではないかと思いますので、もう一度メディア芸術総合センターを何とか作る方向で……。オリンピックの予算から2億を引っ張ってくればいいんじゃないかな。予算を獲得してくるのはここにいる年寄りじゃなくて、そこにいる君たちです」(富野)

当シンポジウムのトーク内容がこんな展開を見せたのも、開催された11月5日が富野の誕生日でもあるからだった。75歳となった富野は「こんな話をしている自分ですから、死に支度をしなきゃならない年齢なんです。その死に支度をしなきゃならないところで、何をするべきかということをこの5年とか最長10年のスパンで考え始めています」という。

「今みなさんのお立場が全然違う中で言うのもなんですけども、50年後にどうなってるかわからないんだから、僕みたいな年寄りになってからギャップがあるのかも知れない。だったら油断せずに何をやったらいいのか、ちょっと想像してみてください。みんな古いもので過去のものなんですけど、ここで展示されてたようなものや、今インターネット上とかIT技術で使われている先駆的なものを含めて、これから50年先の先駆的なものっていうのが、今みなさんの手元にあるはずなんです。自分の手にはどういうものがあるのかというのを考えて頂きたい。漫然とコピペの仕事をしないことを生活の中で10分の1でも100分の1でも思っていて頂きたい。思うことができれば、50年後に皆さん方が亡くなる時には後悔しなくてすむんじゃないかと思ってます」(富野)

 締めに歴代のメディア芸術祭でオススメの作品を聞かれると、富野は「僕からは何も言えません」と返した。

「本当にシリアスな話なんですけども、他人の言うこと聞いて、それを見に行ってとか知ってとか、身についたことは僕にはなかったんです。結局自分で発見するしかなくて、発見するプロセスがないもの。必ずしも学習しろとは言ってません。ある日突然見た絵1枚かもしれない、景色かもしれない、ショックを受けることがあるわけです。僕にもそういう経験はありました。これは僕の経験でしかないから、これを『お前らやれよ!』とは絶対に言えないわけです。ただここにいらしている皆さん方に言える、とても素敵なことがあります。だって、こういう状況見てるじゃない。こうやって経験してればそれで充分かもしれない。それを充分にするかどうかは皆さん方の問題ですから。とても冷たい言い方しますが俺は知ったこっちゃない。俺は死に支度で忙しいんだから!!」(富野)
(取材・文/真狩祐志)

■文化庁メディア芸術祭20周年展-変える力
http://20anniv.j-mediaarts.jp/

富野に訊け!! (アニメージュ文庫)

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もう一本、できれば「ハサウェイ」作って欲しい

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