「ありがとう民主党!(当時)」 里中満智子が“国営マンガ喫茶”“アニメの殿堂”の誤解で疲れ果てた日々を回顧

1611_satonaka4.jpg写真:里中満智子

 さらに里中は日本のアニメも急に世界に通用すると言われるようになったわけではなく、経済的にも恵まれない中で、アメリカの作品と比べると貧乏くさい安っぽい手抜きだとバカにされてもめげすに、情熱と意欲と夢だけで泥水をすすって頑張ってきたと続けた。

「世間というものは非常に表面的な物の見方しかしませんで、『マンガの絵を額縁に入れて美術館に飾るのか』と、それだけ聞いた人が変な計画してると貶めるんですね。同業者の人でも、『自分のマンガを額縁に飾ってもらおうと思って描いてるんじゃない』と言い出す。こっちが言いたいのは、かつての古い時代のマンガ、今の日本のマンガを作り上げてきた原点とも言われる戦後の頃からのデータが本当にありません。原稿も劣化してボロボロで朽ち果てています。社会の注目を浴びた人気作品は何度も単行本化されますが、単行本化されなかった作品も全て歴史なんです。たった1作しか発表されずに消えたマンガ家の作品も、大事な大事な歴史です。そういうのもそこで発信できたらいいなと思っておりました」(里中)

 “国営マンガ喫茶”や“アニメの殿堂”の蔑称と共に波紋を広げたのは周知の通り。一方で里中はランニングコストが予算に含まれていなかったことも反省していた。しかし、“メディア芸術”の範疇はマンガやアニメに留まらないことを改めて確認しておくべきだろう。

「箱があるといいなと思ったのは、場がないと味わえないアートはデジタルデータだけではどうしようもないんです。実験的なことをやるのは若い方が多いですが、賞をもらったけどこの後に置いておく場所がない、処分するしかないと言われた時に涙が出そうになりまして、どうして国が然るべき場所に保管できないんだろう、ずっと見てもらうことができないんだろうと思いました」(里中)

 最近の動きでは、超党派の「マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟」が20年に開館を目指す展示施設構想がある。ただし、そちらはメディア芸術祭のアート部門やエンターテインメント部門に見られるインスタレーションやガジェットなどは対象となっていないので、あくまで似て非なる話だ。

「悔しい思い出ってエネルギーが湧きますよね。あれで私はまだまだ死ねないと思いましたので、ありがとう民主党! 民進党になっちゃいましたけど」(里中)

 おまけとして僭越ながら保存の議論について意見しておきたい。デジタルデータとして保管、またそれらを出力して保管するにしても、こうした場で当時のデジタル環境が失われつつあることについて話されることがないように思われる。OSやソフトのバージョンが古くてデータを開けない、当時のデータや環境で出力しないと再現できない色があるなど、既に問題が山積しているはずなのだが。
(取材・文/真狩祐志)

■文化庁メディア芸術祭20周年展-変える力
http://j-mediaarts.jp/

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明治大とか、私設が頑張っているのも限界があるでしょうし

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