『食糧人類-Starving Anonymous-』おまけの封入マンガが「駄作」の不安を抱かせる謎のプロモーション

2016.10.11

 最近の講談社は、『生贄投票』とか、読んでいて胸糞系の作品が妙に充実しているような気がする。

 そんな中、新たに登場したのが、今回単行本第一巻が発売になった『食糧人類-Starving Anonymous-』。「月刊少年ライバル」などで連載された『アポカリプスの砦』(すべて講談社)の蔵石ユウ(原作)・イナベカズ(漫画)のコンビによる新作である。

 まず、店頭で単行本を見たときに「こういうのアリなんだ」と思ったのは、作品そのものではなくてプロモーションの方法。単行本には『3×3 EYES』(講談社)の高田裕三氏による作品紹介マンガが封入されているのだが、オビにまで「どーだスゴイだろ!」とばかりに「高田裕三描き下ろし!作品紹介マンガ封入!!」と、書いてあるのである。

 これって逆に大丈夫なのかと不安になってしまうのではなかろうか。「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(集英社)が100巻までは面白かったように、『3×3 EYES』が面白かったのは第二部まで……と思っているのは筆者だけではないはず。いやいや、もちろん最後まで単行本で追いかけたけど、あのラストは……大風呂敷のたたみ方の難しさを教えてくれるものであった。

 そんな記憶がある人にとっては、逆に手に取りたくなくなるんじゃないかと不安な気持ちがわき上がってくる。とはいえ、『ドラゴンヘッド』(講談社)だって完結するまでは「いったい、続きはどうなるのだろう」と読者をワクワクさせ、訳知り顔な人には「名作」といわしめていたわけで、連載マンガというのが、煽ったもの勝ちなことも否めない。

 さて『食糧人類-Starving Anonymous-』に戻ろう。

 単行本1巻は、次巻に向けて非常にうまくまとまっている。ちゃんと世界観を提示し、主人公たちが置かれた状況と目的とを描いているからだ。

 舞台となるのは冬だというのに夏としか思えない異常な温暖化の起こっている現代の日本。そこで、高校生・伊江は友人のカズと共に下校途中、乗っていたバスごと拉致されてしまう。

 彼らが連れていかれたのは、防護服に身を包んだ者たちが人間を冷凍し、あるいは飼育されている謎の施設だった。この施設はとにかくグロい。人間が謎の液体によって肥大化されて飼育されている。かと思えば、男女が檻の中で種馬のごとく繁殖させられているのである。

 この謎の施設での人間の役割とは、餌になること。謎の昆虫のような巨大生物に食われるための存在であることが明らかになる。だが、なぜ、この施設が同種の人間たちによって管理し飼育されているのかは謎のまま。とにかく、いかに施設がヤバいところであるかが多くのページを割いて描かれる。

 誰もが正気を失い飼育されている施設の中で、いまだ正常な2人の男、山引とナツネに出会った伊江は、施設からの脱出を図る。しかし、その途上でナツネは「まだ、ここでやることがある」と言い出すのである……。

 月並みな言葉を使えば「謎が謎を呼ぶ」のがこの作品。次から次へと衝撃的グロシーンで読む者を驚かせているのは間違いない。でも、問題が解決へと向かう過程でダラダラになってしまう可能性も否めない。最後まで、読者に飽きを与えずに引っ張ることができるかが、作品の成功のカギといえるだろう。

 封入マンガが何か不安な気持ちにさせてくれるという、またとない作品である。
(文=是枝了以)

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