10万人ものはぐれ者たちが集まった大坂城の中で、豊臣秀頼の母・淀君から大きな期待を寄せられたのが戦国時代を生き抜いてきた知将・真田幸村だった。だが、マキノノゾミ脚本&堤幸彦監督版『真田十勇士』では、真田幸村は超ビビりキャラとなっている。極度の恐がりゆえに、これまで何とか生き延びてきた真田幸村(加藤雅也)だったが、周囲から名将だ忠臣だとおだてられ、うっかり大坂城に入城してしまった上に、出城の真田丸まで築いてしまい、徳川勢と最前線で戦うはめになる。途方に暮れる真田幸村だったが、そんな彼に常に綿密に作戦を与えているのが“抜け忍”である猿飛佐助(中村勘九郎)だった。口がうまく、情報収集能力に優れた佐助は「最後まで嘘をつきとおせば真実になる」と幸村をそそのかし続ける。戦国の世も、もうすぐ終わり。最後の最後に後世に語り継がれるような大きな大きな打ち上げ花火を咲かせましょうや。佐助の甘言に、幸村も霧隠才蔵(松坂桃李)ら他の十勇士たちも釣られてしまう。
主演・松田翔太、ヒロイン・前田敦子の『イニシエーション・ラブ』(15年)で観客を大いに欺いてみせた堤監督ならではの、アニメーションあり、CGありのおかしなおかしな時代劇だ。どれだけでっかい大ウソがつけるかを、堤監督はこれまでずっとモチーフにしてきた。人気シリーズ『TRICK』(テレビ朝日系)では純真な信者たちをカモにする新興宗教の教祖やエセ霊能者たちが跋扈した。人気コミックを実写映画化した『20世紀少年』三部作(08年~09年)は、主人公・ケンヂよりも“ともだち”に感情移入したドラマとなった。日刊サイゾーで堤監督をインタビューした際、原作よりも“ともだち”への肩入れが強くなっていることを尋ねたところ、「僕には“ともだち”の気持ちがわかる」と明言した。繊細な心を持つ堤監督は、学生時代は学校生活になじめなかったことを語ってくれた。売れっ子ディレクターとなってからも、俳優たちがいる賑やかな撮影現場よりも少し離れたモニターの前に佇むことを好んでいる。現実の世界をウソの世界に変え、ウソの世界を現実にしてしまいたい。『20世紀少年』の“ともだち”が壮大なかくれんぼを仕掛けたように、堤監督はテレビ界と映画界を股に掛けて次々と大ボラを吹き続ける。堤作品には虚構の世界でしか生きられない人間の哀しみが付きまとう。
大坂の陣は、失業者や就職浪人たちの総決起集会だった! 大河ドラマよりもひと足先に『真田十勇士』が劇場公開のページです。おたぽるは、映画、その他、大島優子、松坂桃李、堤幸彦、長野辰次、永山絢斗、中村勘九郎、加藤雅也、猿飛佐助、真田十勇士、真田幸村の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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