モノブライト出口博之の特撮自由帳(5)

モノブライト出口博之の特撮自由帳(5)語りつくせぬ『シン・ゴジラ』の魅力を、今語る!「俺なりのシン・ゴジラ評」を聞いてくれ!!

1609_1954.jpg『ゴジラ』DVDジャケット

『1954ゴジラ』は対象物を「見て」から破壊しているので、ゴジラの行動はなんらかの感情に起因するもの、と受け取ることができます。対して「シンゴジラ」は「見る」という行動があまりにも少なすぎるのです。自衛隊のコブラ(攻撃ヘリ)と対峙する場面でも、ゴジラはなんら行動を起こしません。この上ないシカトです。その後、米軍のミサイルを背中が被弾し反撃しますが、あれは生物の脊髄反射、シンゴジラは最初から米軍の攻撃機なんて「見ていない」し、もちろん、私たち人間のことも見ていません。徹底的に他の生物を拒絶する「シンゴジラ」に、私たちと同じ目があること。「シンゴジラ」の目は、人間の深い深い部分へ強烈に訴えかける「げに恐ろしきもの」があります。

・ゴジラの目は何を見てきたのか
 熱心な特撮ファン、特にゴジラファン間では有名ですが、年代ごとにゴジラの顔は変化しています。
 1954年に現れたゴジラは人類が作り出した核によって悲劇的に生まれてしまい、その怨念をはらすかのごとく日本を破壊し、最終的にまたもや人類が生み出した「オキシジェンデストロイヤー」によって死滅。その後、幾度も登場するゴジラはいわゆる「同種族の別個体」という設定をとっています。2作目『ゴジラの逆襲』(55年)以降は、ゴジラの敵役怪獣が登場することによってゴジラ自体のキャラクター性も変化していきます。

 目の表情の変化も合わせると、明確に変わったのは4作目『モスラ対ゴジラ』(64年)でしょうか。このゴジラ(通称モスゴジ)の特徴は、なんと言っても悪すぎる目つき。ゴジラは怖いものであるから目つきが悪くたっていいじゃない。それはそうなのですが、「モスゴジ」以前は巨大生物としての怖さがあったのに対し、「モスゴジ」は「マンガ的表現が強い形骸的な悪役の顔」になっている点が見受けられます。東宝の看板怪獣であるゴジラとモスラ。元は別々の主役を同じ映画で戦わせる構図として、ゴジラが敵役に落ち着いた結果が「モスゴジの極端に悪い顔」に現れています。

 5作目『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年)では、シリーズ最高峰の敵役「キングギドラ」が登場し、これに合わせてゴジラの表情は「漫画的表現が強い形骸的な主人公の顔」になります。判りやすく言うと100人中100人が「正義」と答える「少年マンガの主人公」の顔。目が大きく、正面を向いているのが特徴です。

 ここから少年誌の王道パターンを踏襲したゴジラ(途中、息子もできる)になるのですが、『ゴジラ』(84年)で「街を破壊するゴジラ」が復活、これ以降の平成ゴジラ(VSシリーズ)では人類の脅威となる敵役の怪獣と合わせ、ゴジラも人類の脅威として描かれます。『ゴジラVSビオランテ』(89年)のコピー「勝った方が人類最大の敵になる」は、シリーズを象徴する恐怖と絶望が凝縮されています。

1609_gmk.jpg『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』Blu-ray版ジャケット

 つまり、これまでのゴジラが見てきたものは「ゴジラにとっての敵」であり、その中には人類も含まれている、ということになります。人間であれ怪獣であれ、何かしらと戦うことがゴジラをゴジラたらしめる理由だったのに、『シン・ゴジラ』は絶対拒絶というキャラクター性でそれを完全に打ち壊した、と感じました。
「1954ゴジラ」を除き、唯一「シンゴジラ」に近い立ち位置になるのが『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年)でのゴジラ(以後GMKゴジラ)。ゴジラの出自を「太平洋戦争で命を失った多くの人の怨霊」とし、日本を襲う理由と、自衛隊の攻撃が通用しない理由に初めて明確な設定がつけられています。

「GMKゴジラ」の特徴は、瞳のない真っ白な眼球。対話を拒絶したGMKゴジラ、対話も戦うことも拒絶し破壊の限りを尽くすシン・ゴジラ。その目に映るのは、間違っても人類が繁栄した未来ではないことは確かです。

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