代々木アニメーション学院(以下、代アニ)が運営するライブハウス「代アニLIVEステーション」が、予定されていたアイドルのラストワンマンライブを、直前になって「無断でキャンセル」したとして炎上した事件。
だが、取材を通して当事者であるアイドル側の主張に対する疑念が浮かび上がってきた。
渦中の人物であるアイドル・聖奈みなみがブログで記し、ネットニュースなどによって流布されている事情はこうだ。
聖奈は、8月28日に代アニLIVEステーションで、ラストワンマンライブを予定していた。
ところが、19日になりファンから「会場のスケジュールに掲載されていない」と問い合わせがあったという。それと同時に、代アニから「お伺いしたいことがある」とメールがあったため電話したところ「8/28日にほかのイベントを入れてしまった、と言われた」という。
聖奈の主張によれば、代アニ側は謝罪もなく「前日ならあいてますが」「系列の箱ならあいてますよー」との対応。さらに、同日に入っているライブについて「ウチとは深い繋がりがある」として、聖奈には28日に貸すことはできないと対応。結局、聖奈が急遽見つけた、渋谷のライブハウス「SHIBUYA DESEO」に会場を変更し、その費用は代アニ側が負担することになった。しかし、代アニ側は会場変更によるキャンセルの補償を拒否したと記している。
聖奈が8月20日の21時40分に記したブログは、Twitterなどを通じて拡散され、代アニの「ダブルブッキング」「無断キャンセル」を非難するツイートが次々と投稿された。さらに、8月28日に「代アニLIVEステーション」で予定されているライブが、K-POPグループ「OFFROAD」のものであることから「OFFROAD」を非難する者や、事務所にさまざまな「問い合わせ」を行う者までもが現れたのである。
だが、ネットで流布される聖奈の主張する事実には疑問点も多い。
「ダブルブッキング」の挙げ句に「無断キャンセル」。毀誉褒貶はあるものの、知名度も高い法人である代アニが、社名を冠したライブハウスで、そこまで雑な対応行うのか?
筆者の取材依頼に応じて姿を現したのは、代アニのエンタテインメント事業部の伊藤太郎取締役。伊藤氏は「明らかに、こちらにも非がある」と何度も繰り返しながら、ここまでの経緯を話した。
そもそも、聖奈が代アニLIVEステーションの使用を計画したのは、今回が初めて。伊藤氏の説明によれば、過去に問い合わせがあったことと、他者の企画したイベントでの出演はあったものの、会場レンタルの交渉があったのは、初めてだったという。
最初に聖奈からコンタクトがあったのは、3月22日。8月に予定しているライブのために会場を借りたいとメールで問い合わせがあったことから、対応した伊藤氏は空いている日を連絡。その後メールでPA・照明・ドリンクスタッフ込みで借りた場合の料金の交渉などがあった。
その上で、聖奈からは「その形でお願いします」「詳細決まり次第お送りさせて頂きます」とメールがあったという。
これに対して、伊藤氏は「ご予約を承りました」と返信した。
メールでそのような返信をしたことを「これは、明らかにこちら側の落ち度」と伊藤氏は認める。
代アニLIVEステーションでは、使用申込書に署名を記してもらうことで、正式な契約とみなしている。これについては公式サイト上でも次のように記している。
*ご注意
当ホールはトラブル防止のために口頭でのホールレンタルお申込みはお受けしておりません。
お申込みの際は、メール等で空き状況を問い合わせいただき、ご確認の上、当ホール規定の使用申込書にご記入いただく事で、ホールレンタル予約受付とさせていただきます。
「会って話をしなくては、どういうことをやりたいのかわからないし、支払いについてもどうするのかお話をしなくてはなりません」
伊藤氏は、口頭での申込みを受けない理由を、そう説明する。
ところが、聖奈からはその後連絡はなく、実際に会っての打ち合わせ、条件の確認なども一切なかったという。
ここで、代アニ側がもう一つの落ち度として認めるのは、正式に決まっていない聖奈のライブを一旦、予定表に入れてしまい、その後、消えてしまったことだ。
伊藤氏の説明によれば、スケジュールはGoogleカレンダーで管理を行っている。だが、正式な管理は、使用申込書をベースとしている。そのため、あくまで仮で入れていた聖奈のライブが一旦は予定に組み込まれた。それが、いずれかの時点でスタッフがスケジュールを整理した際に、使用申込書が存在しないため削除されてしまったのではないかと思われる。
これが、どの時期に誰によって行われたかは不明だが、伊藤氏によれば「OFFROAD」は5月に先方からコンタクトがあり交渉を実施。6月に契約書が交わされていることから、この時点では消滅していたのではないかと考えられる。
こうした事態を代アニ側が認識したのは、8月19日のこと。伊藤氏が、副支配人から「28日の聖奈のライブに花を贈りたい」という問い合わせが来ているという報告を受けたのが始まりだ。
そこで確認したところ、聖奈のホームページなどでの告知を確認。使用申込書などの書面を探したが見つからず、過去のメールから3月のやりとりを発見したのである。
「うちにも落ち度があると思いました。そこで、別のライブハウスを探し、その費用も負担するということで謝罪するしかないと思い、まずメールで連絡をしたのです」
伊藤氏は、実際に会って謝罪する準備もしていたが、その後の交渉は電話で行われたという。この時点で、聖奈と電話で話したのは副支配人だ。だが、説明と代替案を受けた聖奈は「移動したくない。なんで私が移動しなくちゃいけないんですか、最低ですね」と電話を切ったという。
報告を受けた伊藤氏は、改めて翌日連絡し謝罪することを決めた。
ところが、翌日になり聖奈が代アニの本社に電話したことから、本社の人間が窓口として対応することになった。話し合いの結果、代アニがすべての費用を支払うことで、聖奈は納得。代アニは、いくつものライブハウスを会場として提案した。ところが、聖奈は自分で見つけた「SHIBUYA DESEO」を使いたいと提案。伊藤氏は、その料金を代アニ側が支払うことを約束した。
しかし、聖奈はそれだけではおさまらず、1時間ライブの時間が後に押し、会場が移動したことでキャンセルするお客さんがいるかもしれないが、その部分の補償を要求した。
「変更が理由でキャンセルしたか判断がつきかねますし、商道徳上も支払うことはできないために、お断りしました。それに対して“わかりました”と口頭で話されて電話が終わったので、問題は解決したと判断していたのですが……」
電話が終わったのは18時頃。これで、一件落着かと思いきや、21時40分になり、聖奈はブログとTwitterで一連の経緯を記したのである。
ここまでの伊藤氏から話された一連の経緯を聞いて、改めて聖奈のブログを読むと一部、事実を歪曲している部分があることがわかる。
公式サイトに記載しているブッキングのルールと、仮の予約をスケジュールに記載し、その後削除したという2つの点は、代アニ側の明らかのミスだ。ここまで記しているように、そのことは伊藤氏も「落ち度であり、誠心誠意謝るしかない」と認めている。
だが「一方的な被害者」と見られている聖奈にも、問題点がなかったわけではない。
それは、ブッキングのルール以前の問題として、3月に連絡した後、一度も会場を下見したり、スタッフと打ち合わせすることなしに「ラストワンマンライブ」を開催しようとしていたことである。会場を押さえておけば、自分は当日、会場に行くだけでPAや照明スタッフは自分の意のままに動くと思っていたのだろうか……。
うがった見方をすれば、騒動事態が初のワンマンかつラストである聖奈による壮大な打ち上げ花火=炎上商法だともいえるのだ。
そうした問題点を無視する形で、代アニ側に非難が集中していることについては、あまり気にはしていないと、伊藤氏は語る。ただ、まったく騒動には無関係の「OFFROAD」に対する中傷めいた言動や、事務所へのメールなどが行われていることには不快感を隠さない。
伊藤氏は、最後にこう語った。
「私たちは、個人で活動されている方々も応援したいという方針で運営をしてきたのですが、このようなことがあっては、今後は考えなくてはならないかもしれない……」。
(文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/)
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