『僕とルネと青嵐』(文月晃) ロリっ子と暮らすハートフルな絵の修行 

『藍より青し』で知られる、文月晃の最新作『僕とルネと青嵐』(白泉社)の単行本第一巻が、いよいよ発売になりました。

 この作品、なんといっても悪人が出てこないために心が安まるストーリーなのがたまりません。

 物語の主人公・創一は美大に通う4年生。この大学では、学生が研修生として大家のもとで修行する制度がある様子。そろそろ、自分も研修先を見つけなければならないと思っていた彼は教授から、一枚の絵を見せられます。
それは、昔から大好きな画家・青嵐の新作です。それを見て、創一は、青嵐のもとで研修をすることを決めるのです。

 ところが、訪れた田舎のアトリエで出てきた老人は、研修を断ります。これも老人=青嵐先生のテストなのかと考える創一の前に姿を現したのは、元気な金髪の少女・ルネでした。

 ルネに案内されるがまま、山の中で一日遊んだ創一は、そのままアトリエに泊まることになります。そうして、なんとか入り込んだアトリエ。そこで、意外な事実が明らかになります。

 それは、青嵐とは、この老人ではなくて、ルネだということ。自分よりもずっと小さな少女が、自分を感動させる絵を描いているという衝撃的な事実! そこに驚きながらも、創一はルネに学ぶことを決意するのです。

 こうして、山に囲まれた田舎を舞台に物語は進んでいくことになるのです。一話完結で描かれる物語では、土蔵に暮らすルネのために創一が掃除をしたりすることで、次第にルネに心を開かせていくことになります。

 この異世界すぎるハートフルっぷりがたまりません。だいたい、美大で絵を描いているような学生の大半は、プライドの塊。なおかつ、嫉妬が大好きなヤツらばかりです。

 もしも、自分が大好きな絵をずっと小さな専門教育すら受けていない少女が描いていたとしたら……発狂するのは間違いないでしょう。

 ところが、この創一は信じられないほどに善人。かつ、学ぶということにストイックです。青嵐の正体がルネだったことに、驚きはしますけれども、即座に気持ちを切り替えて、少女に学ぶことを決めるのです。

 こんな心の綺麗な美大生なんてファンタジーです。でもそんなファンタジーゆえのハートフルな展開に、どんどんと心が浄化されていく感覚を受けるのです。

 そして、この作品には、さらに一つの重要な要素が。絵を描く時には一心不乱のルネですが、幼いながらに創一を男性として意識しまくっているのです。ちょっとした仕草で距離が近くなるとどドギマギしたり、純だけど意識しすぎなのが、読んでるほうまでドギマギさせるではありませんか!

 心に安らぎを与えたい時に読む一冊として、ぜひ本棚に並べて置きたい作品です。
(文=大居候)

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