『超人間要塞ヒロシ戦記』世界はキスで滅亡しちゃうのか? 話のスケールが凄い

 まつだこうた(作画)・大間九郎(原作)『超人間要塞ヒロシ戦記』(講談社)は、とてつもないスケールのSFです、はい。

 この作品を読んで『ドラえもん』でF先生が『STAR WARS』をパロった「天井うらの宇宙戦争」(てんとう虫コミックス19巻収録)を思い出した人も多いのではないでしょうか。

 F先生が『STAR WARS』を好きすぎて描いたエピソードでは、ジャイアンの家の天井裏で、宇宙戦争が繰り広げられました。

 そして、この『超人間要塞ヒロシ戦記』では餃子屋で、星を失った民の国家の存亡をかけた戦いが繰り広げられるのです。

 物語は餃子屋でバイトしているフリーターヒロシが、バイト仲間のしずかにキスをされたところから始まります。しずかは、かつて満員電車の中でまったく揺れていなかった=人生を流されていないヒロシに一目惚れして、同じ餃子屋でバイトをはじめたという過去の持ち主です。

 しかし、このキスが「宇宙一幸福な国」とされていたスカベリア姫国に大動乱をもたらしたのです。

 それは、どういうことか?

 何を隠そう、フリーターのヒロシは世を忍ぶ仮の姿。その正体は「外生物擬態都市型宇宙要塞艦」だったのです。

 早い話が、ヒロシはロボットであり、その中にはスカベリア姫国の人々が暮らしているのであります。ロボットと違うのは、中で操縦をしなくてならないこと。そして、ヒロシが予想外の出来事に出会うと国家は存亡の危機になり、民は反乱。要塞艦の責任者である艦長は自ら責任をとって獄中の人となるのです。

 とにかく、ヒロシの内部では国のために寿命を捨てた、美しい姫様とそこに使えるイカした男たちの美しいドラマが繰り広げられているのです。

 なんてダイナミックな物語なのか!

 ちなみに、作中のセリフによると地球の1年と8カ月が、スカベリア姫国の40年。これまで200年の平和が続いてきたそうなので……スケールが大きいのか小さいのかはよくわかりません。

 とにかく、キス以降、スカベリア姫国には次々と危機が襲来します。それはデート。ここで告白してくる、しずかに対して「お付き合いはできないんだ」と断りつつも、曖昧な笑顔を見せるために、スカベリア姫国のオペレーションルームでは、ヤマトが波動砲を撃つ時みたいなミッションが繰り広げられるんです。

 そして、バイト先の餃子店ではさらなる苦悩が。ヒロシが餃子を握る作業のために、内部では艦長が必死の操縦を行っているのです。

 そこに次々とやってくる追加注文という危機……。

 そんな苦難を次々と乗り越えていくスカベリア姫国ですが、さらなる試練である合コンの危機を迎え物語は次巻へと続いていきます。

 いや、あまりにもスケールの小さなSF。でも、やたらと熱いスカベリア姫国の人々に、思わず共感してしまう作品なのです。

 こんな誰も考えつかない世界を、僕たちは待っていたのだと思いました!
(文=大居候)

超人間要塞 ヒロシ戦記(1) (イブニングKC)

超人間要塞 ヒロシ戦記(1) (イブニングKC)

設定はギャグだけど、内容はシリアス!?

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