100年の時をつなぐ一本の糸──ドラマ『時をかける少女』最終話レビュー

1608_tokikake.jpgドラマ『時をかける少女』公式サイトより

 35年前、薬師丸ひろ子はデビュー曲「セーラー服と機関銃」で「さよならは別れの言葉じゃなくて」と歌った。「再び逢うまでの遠い約束」と。

 少女が歌うその歌は大ヒットし、多くの人があらためて「さよなら」の意味に思いを馳せたことと思われる。

『時をかける少女』最終話、このドラマを見た人もまた、「別れ」と「さよなら」について思いをめぐらせたのではないだろうか。

 未羽(黒島結菜)は、未来から来ていたお好み焼き屋の店主、三浦(高橋克実)に、自分と妻の出会いがなかったことにしてほしいと頼まれる。未来の人間が、現代で生きようとすると、老化が早まり、早死にするというのだ。
「このままさよならをするのは耐えられない」三浦は言う。

 はじめは断っていた未羽だが、三浦の強い思いに押されて了承する。

「出会った責任はあると思う。家族からは逃げないで」

 未羽の言葉を聞き、家族たちの前で別れの言葉を話す三浦。

 未羽は店の外でそれを聞いている。

「私が消すんだ。この家族を。この絆を」未羽はその思いにさいなまれたことであろう。それでも、彼女は過去に行き、2人の出会いを無くした。

「タイムリープ」という出来事を通して、未羽は強くなった。何事もない毎日がやってくることの大切さを知り、変えてはいけない運命の残酷さを知る。

 大人になるということには、いろんな側面があるけれど、悲しみを知ったり、別れを知ったり、そしてそれを受け入れる強さを持ったりすることもそのひとつだ。そんな意味で、彼女は大人になったのだ。

 そして次は未羽の番。

 三浦から「翔平(菊池風磨)も未来から来た人間だ」と聞かされた未羽は、小さい頃の翔平のことを思い出そうとして走り出す。

「時をかける」その姿を象徴するように走る。そして思い出す。「吾朗ちゃんだ……」翔平との思い出だと思っていたのは、実は吾朗(竹内涼真)との思い出だったのだ。

 事実を知り、翔平の命を守るため、彼を未来に帰そうとする未羽。一緒にいるために、この時代に残るという翔平。

「恋なんかしなきゃよかった」未羽はつぶやく。

 しかし、しなきゃよかった恋なんてきっとない。どんな恋だってそのこと自体に意味がある。きっと。

 悩んだ末、未羽は、すべてが始まった時間、7月7日の理科室へとタイムリープする。

 今までの思い出を話して、泣き崩れる未羽。写真を見ながら夏を振り返り、翔平との別れを惜しむ。

 最後、翔平のずっと持っていた写真集が、未来の未羽によるものだとわかる。記憶を消される未羽と、未来へ帰っていく翔平。でも、2人の間には、100年の時を超える一本の糸がつながっているのだ。

 ラストシーン、未羽は夏の空に向けてシャッターを切る。もう初恋の記憶はない。それでも、心のどこかに刻み込まれた思いによって、夏をカメラに納めようとしている。

 タイムリープによってやり直した時間は、なかったことと同じだ。それでも、心や体に刻まれた「思い」によって、その時間は永遠になったと信じたい。

 原作の『時をかける少女』では、最後にこんなシーンがある。

 未来へ帰る少年に少女が「もう会えないの?」とたずねる。

「また会いに来る。でもその時はもう全く別の人間として」

 そう答える彼に彼女は言うのだ。

「私にはわかる。それがあなただということが」

 今回のドラマで、これから先のことは、見るものの判断にゆだねられたということだろう。翔平はまた未来からやってくるかもしれない。未羽が彼に気づくかどうかもわからない。

 未羽は吾朗と結婚するかもしれないし、全く別の人と恋に落ちて、幸せな家庭を築くかもしれない。ただ、例え時間をやり直して、なかったことになった思い出たちも、どこかに存在したことは確かなのだ。

 そして、今回の出演者と、ドラマを楽しんだ私たちと、その共有した時間と思いは永遠だ。

 第1話の時よりも、少しだけ大人になって、とても魅力が増した黒島結菜を見て、そんなことを思うのだ。
(文=プレヤード)

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黒島ちゃんどんどん可愛くなってる気がする

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