各社の次世代型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)も着実に普及しており、10月に発売予定のソニーのPlayStationVRにも期待が集まるが、より没入感のあるVR体験を演出する技術の進化もめざましいようだ。
■“リアルで目に優しい”、中心窩レンダリング技術
デジタル放送時代になった今日、大画面テレビでスタジオ収録のバラエティ番組などを視聴していると目が疲れないだろうか? デジタル放送で画面の隅々までクッキリと写っていることもその大きな原因のひとつだろう。
人間の視野の焦点範囲は、実感以上にずっと狭いエリアに限られているという。しかし周辺視野は大雑把ではありながら、それなりの範囲の物事を把握しており、例えば訓練されたボクサーは予期せぬ方角から相手のパンチが伸びてきても避けることができる。むしろボヤッと大雑把に認識しているからこそ、広い範囲をカバーできるのだともいえる。
そして、この人間の目のメカニズムはそのままVR技術に応用できる。つまり、液晶テレビのように隅々までくっきり映すのではなく、現時点で注視しているエリア以外の周囲をややボカすことで、人間の目に“優しく”なると共に、画像処理のための作業量を減らすことができるのだ。
そしてこのたび、アメリカのコンピュータ機器メーカー、NVIDIAが開発したのが「中心窩レンダリング(foveated rendering)技術」だ。これはユーザーの視線の中心部分のみ高解像度で表現し、周辺視野部分を低解像度で描写するという、より人間にとって自然な視覚認識に近づけたレンダリング技術だ。
今注視しているものだけを鮮明に映し出し、周辺をある程度ボカすことで、情報量が少なくなり“目に優しい”映像になる。またこれがVR世界のリアリティを高め、より深い没入感の演出につながるということだ。
■ユーザーの視線を追跡する最新アイトラッキング技術
もちろん、この「中心窩レンダリング」を実現するにはまず、ユーザーがVR世界の景色のどこを注意深く見ているのかが機器側にわからなければならない。そこで登場するのが今後のVR技術のカギを握るといわれているアイトラッキング技術だ。ある景色の中でユーザーがどこを注視しているのか、その視線の動きを追跡しているのがNVIDIAの技術提携企業でもあるSMIのアイトラッキング技術である。
SMIのアイトラッキング技術は、数年前から段階的に開発されているのだが、この1月に公開したデモ映像では、周辺視野をボカして負荷が低減することで生じた余力をフレームレート向上に振りわけたことを強調している。フレームレートを250Hzに引き上げてよりスムースな視点移動を可能にし、映像の残像感や遅延を大幅に減らすことに成功しているのだ。
2社の合同研究開発チームは、人間の目が周辺視野からどうやって色やコントラスト、輪郭や動きなどの詳細な情報をピックアップしているのかを研究。そこで収集したデータをもとに、人間の目にとってより自然で違和感のない周辺視野のボカシ効果を実現するアルゴリズムを開発したのである。
技術面での進化もますます進むVRの分野。驚くべき画期的なコンテンツが登場する条件が着実に揃っているといえそうだ。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・Gizmag
http://www.gizmag.com/nvidia-eyetracking-vr/44493/
技術面での進化もますます進むVR! 最新アイトラッキング技術で目に優しいリアルなVR世界が実現のページです。おたぽるは、その他、ホビー、VR、アイトラッキングの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
人気記事ランキング
人気連載