『CRIMSON EDGE 1888』(かのえゆうし) 女装美少年のせいで、ストーリー外の妄想が止まらん 

 最近、なにげなく買った単行本に女装とかTS要素が入っている場合が、ものすごく増えてきたような気がする。こんなにジェンダーを越境している日本は、すげえ国ではないかと思いたい。

 というわけで、今回紹介する、かのえゆうし『CRIMSON EDGE 1888』(少年画報社)も、やっぱり女装美少年が登場する良作です。

 物語の舞台は、切り裂きジャックの恐怖に震える19世紀ロンドン。ここを舞台に、掲載誌である「月刊ヤングキングアワーズGH」の読者が大好きな骨太の伝奇アクションが繰り広げられるわけです。

 物語の主人公、ジン・ジャックマンは、相次ぐ猟奇殺人事件を捜査するスコットランドヤードの若き刑事。経験よりも知識のほうが豊富なエリートである彼は、たたき上げの先輩たちに厳しく仕込まれながら事件を解決せんと捜査に励んでいる。

 そんな彼が出会ったのは、ジルという名の美しい貴婦人。ひったくりに遭った彼女を救ったジンは、膝枕で介抱されたことでほのかな恋心を湧かせる。

 しかし、その晩偶然出会ってしまった猟奇殺人事件の現場。無残に被害者に刃を振るっていたのは、そのジルだったのである。

 職務に忠実なジンは、驚きながらもジルを捕らえようとするのだが、そうはいかなかった。その過程で明らかになるのは、ジルが女装した美少年であること。そして、ジルが狩っているのは「天使の子(ガブリエル・ラチェット)」という謎の存在を宿した人間たちだったことが明らかになっていく。

 今回、第一巻で提示される基本的な情報によれば「天使の子(ガブリエル・ラチェット)」とは、学者であったジルの父親が開発した、新人類のような存在であること。ジルが共に暮らす少女・リズはそのプロトタイプであること。そして、軍や謎の組織が、いまだにその研究を進めているということである。

 とにかく物語は骨太である。アワーズ系らしく、これから絡んでいくであろう敵側もやたらと濃いキャラクターを取りそろえているのだ。

 でも、そんなことはどうでもいい。いや、どうでもよくないけど……それよりも気になるのは、メインヒロインが女装美少年ということだろう。

 普段は、女の姿で貧しい者にも献身的な治療を施しているジル。まさに聖女のような彼女は、たびたび差し入れと称してジンの職場にも姿を現すのだ。いやいや、こうなるともう性別なんてどうでもよくなるんじゃないのか?

 どうも、読者以上に作者は、その視点から悶々としつつ制作をしている様子。巻末のおまけマンガでは、ジンの口から「彼が男性であることを忘れそうになる時がある」と語らせている。

 せっかく巡り会った理想的な美女が男。そりゃ迷いが生じるのは当たり前だけど。このハードルを作者がいかに越えさせてくれるのかが、興味ある作品だ。いや、ちゃんと話の本筋にも期待しているから安心してくれ。
(文=ピーラー・ホラ)

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