そんなバカな！「憑依や転生はTSFには該当しない」だって？　『刀剣』『おそ松』に端を発したpixiv“タグ問題”の行方

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「pixiv百科事典」より

　単に「好きだから」という理由で、やたらとTSF推しでレビューしている筆者。そんな筆者の人生にも関わる問題が、pixivで発生している。

　女性向け作品の流入によるTSFタグの混乱に端を発した議論が、それである。

　これは、女性向けの『刀剣乱舞』の審神者男体化によるBLや『おそ松さん』における女体化などが原因で始まったものだ。こうした、女性向け二次創作の作者がpixivに作品を投稿する際に「TSF」というタグを用いたことで混乱が始まったのである。

　この記事を読んでいる御人は理解しているだろうが、TSFとは従来は男性向け作品で用いられてきた用語である。すなわち男から女の身体に変貌することを描くものである。似たような言葉として女性向けジャンルでは女体化という用語が用いられていたわけだが、これがなぜかTSFのタグを用いるようになり、混乱。すなわち、えっちいTSFのイラストやマンガを検索しようとしたら、女性向けばかりが登場するという、男性にとっては萎えな現象が起こってしまったのである。

　この混乱に対して、pixivユーザーの対応は早かった。現在、pixivのコンテンツである「pixiv百科事典」のTSFのページには、TSFの概要を示した上で「女性向け・腐向けの場合は以上の理由によるジャンル間の住み分けの為、女性向け・腐向けにおいてほぼ同義語として機能している『女体化』タグを用いる事が好ましいと思われる。ご協力お願い致します」という一文が掲載されている。

　これによって、男性にとって萎える危惧は回避されたかと思いきや、また新たな問題が発生していた。

　それはTSFとは何かという問題である。

　すなわち、男性向け作品で男性キャラの身体が女体化することをTSFということに異存はないが「女性への憑依や転生、オリ主のヒロイン憑依」は、TSFなのかという意見が飛び出してきたのだ。

　中には「憑依や転生はTSFには該当しない」という意見まで飛び出してきているのだ。

　これは驚きである。

　男性向けTSF作品において、いかなる方法で女の身体を手に入れるかは創作者のアイデアの発露の場である。単に目が覚めたら女にとか、謎のアイテムなどは序の口。着ぐるみを着たら性器までちゃんとある女の身体になっていた。あるいは、女装コスをしようとネットで買った衣装を着たら……だとか、アイデアは無数だ。とりわけ憑依や入れ替わり系は憧れの女性の身体を手に入れるばかりか、元の自分の身体になってしまった彼女の前で痴態を見せる。あるいは、お互いの性別では感じることのできなかった快感を楽しむといった嗜好から、多くのユーザーを獲得しているものだ。

　それでも「憑依や転生はTSFには該当しない」という意見が出るあたり、まだまだ、このジャンルはあくまでマイノリティの様子。確かに、最新の「コミックマーケット90」のカタログを見てもTSFジャンルは、ぐるりと島を一周程度に過ぎないのである……。

　この論争を見て感じるのは、まずこんなことで論争のできる日本は平和だということ。

　そして、多くのTSF作者には更なる度肝を抜く作品を生み出して欲しいということだ。このジャンル、商業では今のところキルタイムコミュニケーションを頂点として、メディアックスが後を追う状況か。月に2、3冊は必ず商業単行本がリリースされるようになって欲しいと思った。
（文＝ピーラー・ホラ）