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モノブライト出口博之の特撮自由帳(3)

モノブライト出口博之の特撮自由帳(3)祝・ライダー45周年! 記念イヤーに熱く展開した『仮面ライダーアマゾンズ』が描いた“正義対正義”とは!?

2016.07.13

 アマゾンを、自分を含めた最後の一匹まで殲滅することが目的の仮面ライダーアマゾンアルファ/鷹山仁はアマゾン細胞の開発に携わっていた研究者でもあり、アマゾンを生み出してしまった自責の念からアマゾン殲滅と「人間を守り、アマゾンは狩る」信念を持っています。
 
 一方、アマゾン細胞に人間の遺伝子を移植した第三のアマゾンと呼ばれる仮面ライダーアマゾンオメガ/水澤悠の信念は、「人間でもアマゾンでも、守りたいものを守る」という、今作においてはほとんど綺麗ごとのような線引きを戦う理由にしていることから、仮面ライダーアマゾンアルファ/鷹山仁と幾度となく戦います。

 そして、アマゾン細胞を培養育成された実験体アマゾン。生きるための食事が人間だったことから、物語の本当の意味での主人公とも言えます。アマゾン駆除班であるノザマペントサービスにも、モグラアマゾンである「マモル」が在籍していましたが、エネルギー補給目的で口にしてしまった人肉ハンバーグによって、食人本能が開花し、作戦中に同僚の三崎を襲い左腕を食べてしまいます。

 劇中ではもう一人のアマゾン「アマゾンシグマ」が登場しますが、シグマは人間の死体にアマゾン細胞を移植した、いわゆるゾンビのような生体兵器です。彼は他のアマゾンと違い人肉などのタンパク質を経口摂取せずに活動できる特殊な位置づけになっていることから、物語の根幹である「食うか、食われるか」の輪から完全に逸脱しています。そのため、劇中で鮮烈な登場の仕方をしたにも関わらず中盤で退場してしまいました。食の本能がすなわち生きることに繋がる物語において、食を必要としないキャラクターが途中退場するのは、現時点では必然だったのかも知れません。シルバーに朱色のシャドーが入ったボディは原典仮面ライダーアマゾンに登場するゼロ大帝を連想させるので、個人的にはこれだけの登場はもったいない気がしてなりません。

 全員が「食べること」という目的は同じながらも、各々の倫理観によって「食べるものと守るもの」の違いが生まれています。仮面ライダーアマゾンアルファ/鷹山仁と、仮面ライダーアマゾンオメガ/水澤悠を対比としてみると、戦うために生きる鷹山仁と、生きるために戦う水澤悠、という構図になっています。原典アマゾンの意匠を受け継ぎながらも信念を一新させた仮面ライダーアマゾンアルファ、原典よりも現代的なアレンジが施された意匠になりながらも原典通り生きるために戦う仮面ライダーアマゾンオメガ。二人のアマゾンという構図は、双方の生き方の違いをハッキリと示し相容れないものとして際立たせるためのものなのです。

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