『ほおばれ!草食女子』(あらたまい) 雑草は生で食べるな! グルメマンガの新世界

2016.07.10

『巴マミの平凡な日常』で知られた、あらたまいの新作『ほおばれ!草食女子』(芳文社)。

「草食女子」とはなんでしょう。草食男子のように、性欲とかを感じさせない枯れた女子のことでしょうか?

 違います。この作品は、グルメマンガの新たなジャンルなのです。

 物語のヒロイン・日高ちゅーりっぷ(本名)は、1ページ目からいきなり無職になってしまいました。このままでは、家賃も払えずに生活の破綻は必至。後に明らかになりますが、彼女は普段から家賃は遅れ気味の様子。ほんわかした若妻風の大家さん・白菊は口には出しませんが、その5歳の娘・花梨には「おとななんだから、おかねくらいもってるでしょ~」と、子どもならではの残酷な質問でグサグサと刺されるのです。

 そんな彼女に差し伸べられた救いの手。それは、田舎から上京して来た隣の女子大生・白神スズナ。彼女は、田舎暮らしゆえに、都会に出てきても雑草を食材へと変えることのできるエキスパートだったのです。

 かくて、貯金も資格も彼氏もなく。生活力皆無で、これまでどうやって生きてきたのかが不思議なちゅーりっぷと、雑草の知識はあるけど人見知りなスズナを中心に、一話完結の物語は綴られます。

 スズナの手にかかれば、ツクシもヨモギも瞬く間に美味しい料理へと生まれ変わります。

 何かと大ざっぱなちゅーりっぷは、最初は雑草を生のまま食べたりしようとしますが、次第に知識は……ついていきません。そもそも、この娘ってばアサリは砂抜きしないといけないことすら知らないので、不安がいっぱい。

 そんなキャラなので、セリを採りに行った際には、スズナに「何もやらないで」と止められます。それはなぜか? セリと似たような形のドクゼリという毒草があるからです。

 作品中では、セリとドクゼリの見分け方も教えてくれるので、読者は間違えることはなくて安心ですね! ……慣れないと、間違えるのでやめておいたほうがよいと思いますけど。

 もし、このマンガの影響を受けて雑草を食材にしようと思うなら、菜の花かヨモギくらいにしておくのが無難だと思います。

 それでも、この作品は読んだ後に挑戦してみたくなるパワーを秘めています。なぜなら、あらたまい氏の描く女のコたちが本当に美味しそうに食べているからです。『巴マミの平凡な日常』で、氏が描いたアラサーマミさんには、大勢の男性が陥落させられました。そのパワーたるや、半端なロリコンは一気に転向したほどです。

 そんなわけで、雑草食の魅力を知らしめる、おそらくマンガ界発の雑草グルメ作。ぜひ、注意しつつ雑草食を試してみたいではありませんか!

 なお筆者は、途中から登場するポンコツお嬢様・生駒茅のお屋敷に、ノビルが生え放題なのが心底羨ましく感じた次第です。
(文=大居候)

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