『いんらんベイベー』(森井暁正) 未成熟な肉体の中学生の暴走する性欲……

 いったい、どれくらい淫乱なのかーーーッ!

 そんな期待だけで、読んでみた森井暁正『いんらんベイベー』(講談社)。

 その実態は、中学生ならではの青春エロスなのであった。

 主人公・常願寺君は中学生。彼を含めて、中学生は揃って性の目覚めが始まっている年頃。

 クラスでは美少年として女子から熱い視線を浴びている常願寺君も、ご多聞に漏れず目覚めはじめていた。

「クラスメイトの江口さんが、エロ過ぎる!」という形で。

 かくて、綴られる物語。それは、恋なのか性欲なのか判然としないままに、常願寺君は江口さんの仕草がいちいちエロく見えてしまうのである。

 この作品が初の連載だという森井氏は、そんな青春ならではの心の機微をコメディタッチで描いていく。ここで重要なのは、第一話で江口さんは常願寺君にまったく気がないことが読者に明かされていること。江口さんは、女子にはがさつな男子とみられている常願寺君の親友・タケルのほうにお熱なのである。

 つまり、読者は、どうせ報われることのない関係なのだろうと知っている。その中で、江口さんの一挙一動にドキドキする常願寺君に、一種のカタルシスを覚えるのである。

 そんな状況の中で常願寺君は、中学生ゆえに、わずかなことにいちいち性欲を感じてしまう。うたた寝する江口さんの、あくびの涙にドキドキし、ヨダレを飲みたいとまで思う。

 夏服には「予想をはるかに超えた破壊力」を感じ、偶然目に飛び込んできた腋を思わずガン見してしまう。

 さまざまなドキドキシーンが描かれていくのだが、常願寺君の江口さんへの性欲は、少々変態方向へと拗くれていく。それが露わになるのは、梅雨の季節。雨に降られて濡れて教室に入ってきた江口さんの服から垂れた水滴を、飲みたい衝動に駆られてしまうのだ。これだけでも、相当の変態だが、常願寺君の暴走は止まらず、江口さんが雑巾を絞ったバケツに顔を突っ込みたいとまで本気で思ってしまう。

 ここで思い浮かぶのは、青春の定番。好きな女のコのリコーダーを舐める男子の姿である。すなわち、女子に対して感じた愛や性をいかにしてぶつけるかが、わからぬゆえの暴走なのである。

 作品を通じて読者は、自身の中学生時代を振り返るだろう。中学生ならではの、未発達な身体を存分に味わうチャンスがあったのに、常願寺君のごとく、よくわからない衝動ばかりだった日々を。笑いと共に、後悔ばかり感じてしまう本作。ああ、もう一度中学生からやり直したい。
(文=ピーラー・ホラ)

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