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 しかし、当時から彼女はいろいろなものを抱えていたのだと思う。

 中学生でサンミュージックに入り、社長の自宅に下宿をしていたとき、事務所の、そしてアイドルとしての先輩である岡田有希子が自ら命を絶つ。

 それを目の当たりにした少女は、一体何を思っただろう。

 自分と同じ家に暮らして、自分と同じ仕事をしていた女性が自殺をした。そして、自分はその同じ道を歩まねばならない。その覚悟は、想像を絶するものであったに違いない。

 彼女はそこでも逃げる選択はしなかった。

 なぜなら彼女には逃げる場所などなかったから。

 覚せい剤の事件があってから、彼女の生い立ちや複雑な家庭事情が報道されたが、あの頃のファンは、そのあたりのこともみんな知っていた。それも含めて、芸能界で戦っている彼女を応援していたのだ。

 そして、彼女がレコードデビューした後、時は「アイドル冬の時代」へと入っていく。そんな中で、「正統派アイドル歌手」として、彼女はまた新たな戦いを強いられることになるのだ。

 ヒット曲こそなかったが、この頃の彼女の曲は名曲が多かった。アイドルとして戦いは続けていたものの、少しずつ肩の力も抜けてゆき、「女性としての優しさ」や「素敵な恋の情景」などを見事に歌いこなし、着実に「表現者」としての幅を広げていった。

 正直、彼女が時折、淋しそうな、そして辛そうな表情を見せることがあるのに気づいてはいた。ただ、ファンである私たちにできるのは、いつかそんな彼女の努力が実を結ぶことを祈り、応援することだけだった。

 願いが叶うまでには、デビューから8年の歳月を要した。

 1995年、ドラマ『星の金貨』(日本テレビ系)に主演、主題歌となった「碧いうさぎ」(ビクターエンタテインメント)も大ヒットし、紅白歌合戦にも出場した。

 彼女は負けなかったんだ。戦いが実を結んだんだ、そう思うと嬉しかった。

 私生活でも結婚をし、子どもにも恵まれた。

碧いうさぎ

碧いうさぎ

のりピー最大のヒット曲

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