大正時代から走り続けてきた地域の財産 さいたま市・蒸気機関車撤去の危機に、あのシナリオライターも保存を呼びかけ

 一方のさいたま市は、解体撤去はすでに決定したものだという態度を崩さない。

「今年度、解体撤去のための予算は確保しています。ただ、業者選定には至っていないので時期は未定です。今年度中には執行したいと思っているのですが……」

 そう語るのは、39685号機を管理するさいたま市中央区役所の総務課担当者。

 区役所で、解体撤去を決めた理由を尋ねたところ、次のように答えた。

「昨年度、JR東日本などと調査を実施しましたが、著しく腐食しており修復は困難だと判断されました。アスベストも含まれているため、地震で崩壊してアスベストが飛散する恐れが否定できないのも理由の一つです」

 外見上は腐食が進んでいる程度に見えるが、そこまで修復が困難な状態なのか?

「大正時代の車両で、JRには設計図面も残っていません。そのため、修復するには解体して必要な部品を調べ、製造する必要が出てきます。莫大な金額がかかるため、市では困難だと判断しました」

 保存コストが膨大だという、さいたま市だが、進行豹氏をはじめ、保存を呼びかける人々は、この点に疑問を呈している。

 再び、進行豹氏の話を紹介しよう。

「これまで行政が解体撤去を決めた車両が、保存活動で甦った例もあります。そうした事例を参考に、ボランティアベースで実施すれば行政が事業者に発注するよりも、遙かに低い金額で修復ができると考えています」

 何かあったら遅いとばかりに撤去を進めたいと考えている、さいたま市。対して保存を呼びかける人々は、単にノスタルジックな気持ちで主張しているのではない。まだまだ打つ手があると考えているのだ。

 それでも、さいたま市が解体撤去方針を改めない理由は、市民からの保存を求める声の少なさだ。前述の担当者によれば、保存を求める意見が届いているものの、ほとんどは市外からのものだという。

 進行豹氏らも、その点は承知しており、今後意見交換会などの形で市民にも39685号機が、いかに地域にとって貴重な財産であるかを知ってもらう活動も実施する予定だ。

 いずれにしても、現在解体撤去が進んでいないのは、一部部品をJR東日本や鉄道博物館に寄贈する調整を行っているため。よって残された時間は少ない。署名は一旦、1,000筆を目標にしている。

 誰もが、子どもの頃に公園に保存された蒸気機関車に、なんらかの憧れを持った経験はあるはず。だからこそ、どうにか修復と保存が続くことを祈って止まない。
(文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/

■署名サイト change.org
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