どこまで話を引き延ばすのか? 木尾士目『げんしけん 二代目の十一』第20巻(講談社)に、そろそろイライラが募ってきた。
二代目になり、かねてより描かれているのが、斑目ハーレムをめぐる騒動。この間、いったいどうやって決着をつけるのか? という物語が続いてきた。
前巻で、卒業旅行に出かけた一行だが、悶々とした想いを抱えた面々に吉武が、この旅行中に斑目に1人を選んでもらうことを提案。ついに、決着は間近かという予感が募ってきた。
そして20巻である。
いよいよ決着がつくかと思いきや、物語は遅々として進まない。決断できない男・斑目に加えて、男の娘・波戸に悶々とした想いを抱く腐女子・矢島の物語が挿入されていく。
二重三重に絡み合った男女の想いを描くのは、作者の妙技。だが、ここにきて新たな要素の挿入に読者の側は戸惑いを隠せない。また、斑目の決断が遠くなってしまったからだ。
こうなってくると、すべてを見透かしたかのように立ち振る舞う吉武がウザイ。ひたすらにウザイ。
そもそも、この作品は一見大学サークルのありえそうなリアルを描いている風を装いながら、敢然としたフィクションである。何しろ、大学卒業後に就職した中小企業を1年も持たずに辞め、サークルの部室に居座る先輩。そんな無職男に対して、誰もが優しい。優しいどころか女子たち+男の娘たちが次々と惚れていく。そんなあり得ない作品なのに、どこか現実味を感じさせ「いったい、斑目は誰を選ぶのだろう」と思わせる点は作者の妙技といえる。
だからこそ、いつまでも決着のつかない様に、イライラし憎悪すら覚えてしまうのである。
実のところ、読者もわかっているし、登場人物たちもわかっているのだ。斑目ハーレムの中で、本命は波戸クンなのだと。第20巻の中盤、アンジェラは誰もが口に出していなかった、その言葉を放つ。
ここで唖然とするのは、その言葉にげんしけんの一同が驚いていること。ここまで、人の心を見透かすかのように事態をかき乱してきた吉武まで「マジスか!?」と口走っている。
ホントにわかっていないんだとしたら、それは大学生ゆえの経験値の少なさが原因か、あるいは、わかっていても認めたくなかったのか?
その答えは、おそらく後者なのだろうと思う。
斑目と波戸クンが付き合う上で障害になっているのは、ハーレム化しているサークルの人間関係だけ。口では「私、男なんですから」という波戸クンではあるが、既刊でも描かれてきたように、この2人の中で、もはや性別はまったく障害にはなっていないのだから。改めて既刊から2人の会話を読み込んでいくと、関係性が「この人ちょっといいかな」から「付き合っていいかな~どうしようかな~」と変化しているのも読み解けるはずだ(各人、確かめてくれ)。
結局、事態を混乱させているのは斑目の人のよさ=決断力のなさに尽きる。結論からいうと、第20巻においても結論は出ることなく次巻に続くとなってしまった。
結論はとうに出ている。にもかかわらず引き延ばしているかのような展開は、作者の意図なのか、あるいは……?
(文=昼間たかし)
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