さて一方の松岡。
初めてモーニング娘。’16と対面する時、松岡の緊張はピークに達する。見ている我々にも緊張が伝わってくるシーンだ。
最初は「ここは天国だ」といって喜ぶ彼女。しかし練習が進むにつれ、彼女の目の輝きが変わってくる。
そしてライブを控えたある日、彼女は言う。
「私の中で『モーニング娘。』を見て涙を流す自分は死にました」
この言葉こそが、フィクションだけではない、彼女の心の中にある確かな変化を捉えた、リアルな言葉だと思った。
ステージに立った松岡茉優は完璧だった。
アイドルとして完璧だし、女優として完璧だった。
「長年の夢を叶えた」という喜びを自身の演技に乗せて、全力でパフォーマンスした。
とにかく「すげぇ!」って思った。松岡茉優も、伊藤沙莉も、モーニング娘。’16も。
当然、番組の企画とはいえ、ライブで下手なパフォーマンスは見せられない。ましてや、松岡にとっては長年憧れていたグループだ。
ここで、フィクションとドキュメンタリーの境目が見え隠れする。
台本として書かれている(であろう)部分に、松岡が自分のリアルな気持ち(モーニング娘。になりたい)を乗せる。
実は、この「フィクションを通して夢を叶えていく」という手法、松江監督の作品ではおなじみのものなのだ。
2007年の映画『童貞。をプロデュース』では、元アイドル島田奈美にあこがれる童貞少年の夢を叶えようと奔走し、09年の『あんにょん由美香』では、台本にあって撮影されることのなかった幻のラストを撮影しようと試みる。
そして今回。「モーニング娘。とステージを共にする」という松岡の夢を、本当に叶えてしまった。
そこには、単にフィクションとして描かれた「夢を実現」を超えた、もっともっとリアルな感動があった。
本番を終え、手を取り合って走り出す伊藤と松岡。
たどり着いたのは、会場近くの船上。そこでは、これまで番組に関わった人たちが待っており、2人を祝福する。「おこだわり」のテーマをみんなで歌い、踊って大団円。そして、続編の予告テロップを持って叫ぶのだ。
「また10年後!」
この楽しそうで、満足げな空間。それを本当に作り上げたかったのは誰なのか? 何のことはない、一番の「おこだわり人」は松江監督自身なのである。
そのバカバカしさを、そのくだらなさを、そしてその素晴らしさを、この番組を通して教えてくれたのは、誰あろう松江監督自身だった。
私たちは何かに「おこだわって」生きているだろうか?
正直、この番組に出てきた「おこだわり」人は、みんなかっこ悪かった。
偏執的に何かにこだわる姿が、常人には解せないことばかりで、異質な感じはぬぐえなかった。
でも、番組を通して見ればわかる。そのかっこ悪さこそが最高にかっこいいのだ。
どうせならさ、できるだけつまらないことにトコトンこだわって生きてみようぜ!
(文=プレヤード)
松岡茉優の「おこだわり」が実現!でも本当に一番「おこだわってた」のは誰?『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』のページです。おたぽるは、芸能、アイドル&声優、松岡茉優、その「おこだわり」、私にもくれよ!!、プレヤード、モーニング娘。'16、伊藤沙莉、松江哲明の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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