「ホラー映画大嫌い!」こそ見るべき!?『貞子vs伽椰子』おしっこ漏れちゃわないための鑑賞の手引き

■必要以上に怖がることないですよ

 人間が恐怖を感じるのは、自己防衛本能からだ。こうしたホラー作品を見る場合、大多数の観客は「貞子・伽椰子」側か「死ぬ人」側かといえば「死ぬ人」側である。つまり『リング』や『呪怨』に本作風のタイトルを付与するとすれば『貞子vsオレ』『伽椰子・俊雄vsオレ』となり、そこにはもはや絶望しかない。あんなのに勝てるわけないのだ。そうして「貞子や伽椰子に敗北し、呪い殺される自分」を想像することで恐怖心がかき立てられるわけだ。

 本作でも、私たちは貞子の「呪いのビデオ」に呪われる有里(山本美月)や、伽椰子の「呪いの家」に呪われる鈴花(玉城ティナ)に感情移入することになるが、そこはあくまで『貞子vs伽椰子』なので、「殺される」恐怖と同時に「貞子なら、伽椰子ならきっとなんとかしてくれる!」という一抹の希望が見える構図になっている。対決というからには、なんらか決着がつきそうだ。決着がつくということは、あいつらだって無敵じゃないってことだろう。と、そういう、ちょっとした安心感が生まれるのだ。

 それでも、やっぱりこの映画はけっこう怖い。貞子も伽椰子・俊雄も、その実力を存分に発揮しながら、どんどん人を殺していく。殺される人たちのパーソナリティが簡潔かつ丁寧に描かれているおかげで、とても悲しいし、とても怖い。目を背けたくなる御仁もあることだろう。

 だが、そんなときは「対決である」ことを思い出してほしいのだ。そして、少しの安心感によって生まれた余裕でもって、彼女たちに思いを馳せてほしい。貞子も伽椰子も、決して悪い人じゃないのだ、たぶん。

 この作品では彼女たちが“呪いの者”となった過程はほとんど描かれていないが、きっととっても悲しいことがあったに違いない。そんなことは、顔を見ればわかるでしょう。ひと思いに成仏したかったはずでしょう。恐れ戦くより先に、どうか同情してあげてください。

■前哨戦としての恐怖パート

 それでもあんなバケモノに同情できないというなら、異種格闘技スポーツとして楽しんでみるという手もある。

 貞子も伽椰子も、これまで連戦連勝の最強王者で、すでに世界進出も果たしている。そんな2人が稀代のタイトルマッチを前に、噛ませ犬(人間)相手に前哨戦をこなしながらウォーミングアップをしていると考えるのだ。

 貞子はまず手始めに、普通にビデオを見た人間を普通に呪い殺して見せる。基本スペックに則った殺人スキルである。だが、伽椰子を相手にした場合、そう簡単にはいかないだろう。貞子は、誰かが伽椰子に呪いのビデオを見せないと何もできないし、仮に伽椰子がビデオを見たとしても「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」とか言うだけで、呪いにかかったりしなそうだ。この時点で、貞子はビデオを見ていない相手、あるいは見ても呪いにかからない相手に対して、まったくの無力である。

 一方、伽椰子と俊雄の呪いは実に直接的だ。呪いの家に立ち入った人間を、全員食う。実際に伽椰子と俊雄は人間の身体に手を伸ばし、物理的に屋根裏や押し入れに引き込んでいく。呪いというより、もはや人攫いである。強い。とにかく腕力とか、すごく強い。どうやらこの対決、伽椰子有利である。

 だが、中盤になって、貞子の新たな能力が明示されることになる。ビデオを見ていない人間でも、今回の貞子は容易に殺せるのだ。「やっぱり貞子、強し」を印象付け、対決への期待をいやおうなく高める名シーンとなっている。このシーンがとんでもなく怖いこともあって、貞子有利の気配が漂いだす。

 そんな2人の対決をお膳立てするのが、経蔵(安藤政信)&珠緒(菊地麻衣)の奇矯な霊能者コンビだ。緊張感を和らげつつ呪いの矛先を人間たちからそらしてくれるので、中盤以降は「バケモノにバケモノをぶつける」ことへの好奇心が勝ってくる。時代はいつだって、最強を求めている。

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きっとくる~きっとくる~

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