『ムーム』日本初上映で元ピクサー・堤大介監督トーク 「経験豊富で確実にできる人より、できるかわからないけどやりたい人が成長する」

1606_moom10.jpg第87回アカデミー賞にてロバート・コンドウ(左)と

「お国柄とかも出て、ベルリンでは子どものカテゴリーだったんですけど、その中では一番ハッピーって言われたんですね。ベルリンの次に行ったのがニューヨーク子供映画祭で、明らかに僕らのが一番暗い映画でした。それでいろんなことが重なってアカデミー賞まで嘘のようにトントンとノミネートされて、宝くじみたいですよね。色んな映画祭で短編映画を見てきた中で、サポートもあって良い思いをさせてもらいました」(堤監督)

 その中でも、サンフランシスコの公立小学校に行った時のことが印象に残っているそうだ。「先生の文字とかが消されてないホワイトボードに投影してたんですよ。スピーカーとかもないからノートから音声も出して、ディスカッションしてくれたんですよね」(堤監督)。映画の良さや技術的なところ云々ではなく、キャラクターに感情移入して話し合っていた子供たちに感銘を受けたという。

1606_moom11.jpgサンフランシスコの小学校にて

「世界中の子どもたちに見てもらえるかどうかわからないけど、サンフランシスコの小学校の子たちにディスカッションしてもらえた。あれをもう一度みたいよねって」。先の「なぜ僕は絵を描いているんだろう?」という疑問に対する“なぜ”の部分が明確になった堤監督は、「言葉にするのって難しいんですけど、自分たちが絵を描いてきたり、アニメーションを作ったりしてきたのって、ここにヒントがあるのかなと思いピクサーを辞めました」とのこと。

■『ダム・キーパー』をCGで長編化へ 『ムーム』で日本のCGスタジオと連携

1606_moom12.jpgトンコハウス展

 堤監督は『ダム・キーパー』で共同監督のロバート・コンドウと一緒にピクサーを辞め、トンコハウスを設立。しかし「何をやるかを全く決めていなかった」と明かす。バークレーに構えているスタジオも、トンコハウスのビジネス周りをやっている同僚が元々大工だったため、手作りで内装を整えていったという。

「トンコハウス展を今春、リクルートのクリエイションギャラリーG8で開催しましたが、僕はずっとアメリカの会社で仕事をしてきたので、日本とのコネクションはすごく大事。やっと日本に帰って何かできるチャンスが来たんです。『ダム・キーパー』の続編も作っていて、これがトンコハウスの一番のメインプロジェクトなんですね。長編化してるのでそのマンガも来年出しますけど、現在は2冊目を始めないと間に合わない状況になってます」(堤監督)

『ダム・キーパー』の長編はCGで作ることになっている。テスト版の制作は昨年、アカデミー賞ノミネートの際に、TBS「情熱大陸」の最後部分で訪問していたアニマとともに行った。「油絵や絵の具タッチってのは僕らにとって得意分野ではあるんですけど、CGアニメーションの世界では僕は16年、ロバートは12年なので、やっぱり得意なんですよね」。堤監督が期待しているのは、日本のCGアニメーションの伸びしろだ。

1606_moom13.jpg『ダム・キーパー』長編テスト)版

「日本は手描きが世界最高レベルなんですけど、その分CGがちょっと遅れているんです。『ダム・キーパー』の短編の時と同じで、すでにできている人たちよりも、ちょっと遅れている人たちの方が僕らは凄く共感できます。僕らもピクサー辞めてゼロからのスタートだから、これから上を目指してハングリーな精神でいられる仲間を探しています」(堤監督)

『ムーム』は東宝のプロデューサーで、絵本『ティニー ふうせんいぬのものがたり』(絵:佐野研二郎)が話題となっている、川村元気の絵本を原作としている(絵:益子悠紀)。川村はなども手がけているが、堤監督は最初アニメ化を持ちかけられた際、一旦断ったと明かす。「『ムーム』は素晴らしいけど僕らの話じゃないので、映像化するのは違うなと思ったんです」。

「僕らの中で大事にしているピクサーで学んだお話作りの中に、受け継いでやりたいと思っていることがあります。『ファインディング・ニモ』で自分の子どもをいつまで手元において置けるかというテーマがあったんですね。監督が自分と息子との距離を見い出していくという。誰のためでもなく、自分と息子のパーソナルな部分で感じていることに向き合って作ったのは大事なこと。それが成功につながったと思っています」(堤監督)

スケッチトラベル

スケッチトラベル

WOWOWかなんかでも、様子が放送されてましたよね

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