【劇場アニメレビュー番外編】日本映画界を支える“アニメ映画界”を2016夏、新海誠『君の名は。』が大きく変える!?

2016.06.11

左上より時計回りに『ガールズ&パンツァー劇場版』、『劇場版響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へ』、『君の名は。』、『デジモンアドベンチャーtri.』、各公式サイトより。

 5月21日、下北沢トリウッドに原作:新海誠、監督:坂本一也の『彼女と彼女の猫―Everything Flows―』を見に行こうとしたら、本日の上映はすでに満席だとツイッターにアップされていた。初日でゲストの登壇もあるからやむなしかと思い、翌日早めに劇場に行ってチケットをゲットしたが、開場の頃にはやはり満席となり、入りきれずに泣く泣く帰る者続出。もともと50席ほどの小さな劇場とはいえ、やはり新海誠を発掘した劇場でもあるだけに、そのリメイク版テレビアニメを再編集プラス新たなシーンも加えたOVAの劇場上映は、この夏期待の新海監督の新作『君の名は。』が待ちきれないファンを大いに刺激したのだろう。

 5月21日は『ガールズ&パンツァー劇場版』の全国再上映初日でもあり、27日にBlu-ray&DVDが発売されたにも関わらず、観客動員は留まることなく、ついに興収22億円を突破し、深夜アニメの劇場用映画の興行成績歴代2位に躍り出た。昨年11月に公開されてから、今なお盛り上がり続ける『ガルパン』の魅力は、なかなか実写映画の興行成績が思い通りに上がっていかない(特に洋画)映画業界は真摯に検証してみるべきだと思う。

 6月18日からは『劇場版KING OF PRISM by Pretty Rhythm』4DX上映が始まるが、こちらもガルパン同様すさまじいことになる予感がしている。私は2月の末に本作を新宿バルト9 のナイト上映で鑑賞したが、終電もない深夜なのにどうしてこんなに若い女の子たちが集っているのかと目を疑うほどの大入り満員で、またこのときは上映中クスクスクスと忍び笑いが漏れる以外、異様なまでに場内は静かだったのだが、いざ上映が終了して明るくなるや、「きゃー!」の悲鳴とも歓声ともつかない絶叫が場内にこだまし、その後みんなで感想をキャピキャピ言い合いながら、誰も席を立とうとせず、係員が必死に「そろそろお帰りくださーい」と叫んでいるのが印象的だったのだが、2016年の上半期は男の『ガルパン』と女の『キンプリ』に象徴されるのだろうなと痛感された次第であった。

 2016年上半期、もちろん『映画ドラえもん 新のび太の日本誕生』や、今年もなかなか楽しく狂乱していた『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド』などメジャーのファミリー路線は絶好調で、シリーズ20作目となる『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』に至っては興収60億円を超える大ヒットとなっているわけだが、こういった定番、ファミリー向け以外の、いわゆるアニメヲタク好みのマニアックな作品群も、それぞれ無理のない範囲で安定した成績を収めているように思える。1月に公開された『傷物語〈I鉄血篇〉』は興収8億円、動員60万人を突破した。

 もっとも、いくら数字上では大ヒットを謳いあげても、いざ劇場へ行くと閑古鳥が鳴いている実写作品が多々ある中、ことアニメーション映画に関しては数字などもはやどうでもよくなるくらい、いつ行っても劇場は一定数の観客で満たされており、活気に満ちた心地よい鑑賞ができることが圧倒的に多い。

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