トップ > その他 > 特撮 > 記事詳細  >  > 3ページ目

【特撮・特撮&ロック】

モノブライト出口博之の特撮自由帳(2)“家族”がいるからこそ描かれるヒーローの素顔とは!?『仮面ライダー響鬼』が見せた父性に注目してみました!!

2016.06.10

テレビ朝日『仮面ライダー響鬼』公式サイトより

 この父性を抽出してひとつの物語にしているのが、『仮面ライダー響鬼』(以下、『響鬼』/05年)でしょう。
『響鬼』のストーリーは魔化魍(まかもう)と呼ばれる古くから日本各地に現れる怪物を倒すため、厳しい修練を積んだ人間が呪術的な力で鬼に変身し魔化魍を倒すというもの。
鬼となって魔化魍と戦う響鬼と、鬼と魔化魍の戦いに遭遇してしまった中学生・安達明日夢(あだちあすむ)、立場も年齢も違う2人が主人公です。

 今作の主題に父性があると感じられる点は、逆説的ですが「主要登場人物に父親がいないこと」にあります。
 明日夢の両親は離婚しており母親と2人暮し。物語後半で登場する響鬼への弟子入りをめぐって明日夢と衝突する桐矢京介(きりやきょうすけ)も、消防士だった父親を火災で亡くしています。この2人が響鬼へ弟子入りするのが後半の山場になるわけですが、この心理は思春期男子が誰しも通る認められたい欲、いわゆる「自己承認欲求」です。

 明日夢は鬼の修行中に「自分にできる人助けは、鬼以外にあるかもしれない」と気付き、医者を目指す道に向かいます。紆余曲折ありながらも最終話では明日夢はきっぱりと「鬼にはなりません」と宣言し、違う道を選んだことを響鬼に伝え、響鬼は「鬼になることだけが俺の弟子になることじゃない」と明日夢の成長をうれしそうに認めます。

 京介が弟子入りを懇願する理由は、火災現場に突入して亡くなった父親を越えたい。しかし父が死んでしまっているため、自分は鬼になることで父親を越えたい。
考え方によっては自分も父親と同じ消防士を目指す、という方向も父親越えの一つになると思うのですが、亡くなった父親の代わりに目指した存在が鬼である響鬼なのです。

衝突を繰り返していた両者は最終的に互いを認め合い、鬼としての弟子は京介、鬼を越えた弟子に明日夢、という関係に着地します。

 では、師匠として2人の少年と接している響鬼に焦点を当ててみましょう。
 鬼は師弟制度を採っており、基本的に師匠と弟子がマンツーマンで行動し魔化魍と戦いながら技や鬼としての心構えを弟子に教え、弟子は免許皆伝を授かると独り立ちし自分の屋号を持ちます。師弟の関係は親と子のそれとほぼ同義か、それ以上のつながりがある関係です。

 しかし、響鬼は師匠をもたず、たった一人で鬼になる修行を積んで鬼になっています。いわば、親がいないのです。この境遇は2人の少年と共通する点ですが、親がいない負い目を地道ながらも極限まで己を鍛え、自己肯定をすることで払拭するほかなかった響鬼。
 序盤で弟子はとらないと言っているのは、親の立ち振る舞いがわからないから。2人を弟子入りさせるに至った心境の変化は、響鬼自身の親になる決心がつき、心の成長が起こった瞬間といえます。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング

PICK UP ギャラリー