高峰自由『彼女と俺とみんなの放送』(電撃文庫) オフパコなんてない、とても綺麗なニコ生世界

「ニコ生」を使って、こんな作品を書くことができるんだ。高峰自由『彼女と俺とみんなの放送』(電撃文庫)は、第22回電撃小説大賞の最終選考作です。惜しくも受賞は逃したのに出版されたのは、やっぱりカドカワだからでしょうか……?

 そんな大人の事情はどうでもよく、本作はものすごくストレートな青春小説になっております。

 物語の主人公・播磨巧翔は中学時代、ニコ生にハマりまくっておりました。それも、視聴者じゃなく生主側で「ニコ生七大天使 タクエル」として、超有名人になっていたのです。でも、高校に入学するにあたって彼は引退を決めます。それは、リアルでまったく友達がいない自分の人生を改めようとしたから。

 いや、中学生ぐらいでニコ生で持ち上げられたら調子に乗ってドローンとか飛ばしはじめるヤツもいるというのに、なんて冷静な主人公でしょうか?

 でも、巧翔には大きな問題がありました。リアルの彼は、コミュ障だったのです。

 高校で「お前、どこ中」と話しかけられても「ニコ中……」とか口走ってしまうくらいに。かつて、ニコ生での巧みなトークを生かして夢見たリア充生活は実現せず。ぼっちの高校生活が始まったのです。

 そんな彼が出会ったのは、クラスでは「窓辺の精霊」と呼ばれている美少女・御山千遥。

「窓辺の精霊」なんて名付けられたら軽いイジメとしか思えないんですけど、とにかくクラスメイトと交わることもない寡黙な美少女です。そんな彼女が放課後の教室で配信しているところに出くわしたのをきっかけに、巧翔は「ニコ生七大天使」であったことを知られ、千遥に弟子入り志願をされるのです。

 こうして、有名生主を目指しながらも、まったく鳴かず飛ばずな千遥と、えらくスキルの高い巧翔とのニコ生ライフが始まるのです。

 2人の物語には、これまた美少女生主の峰岸花鈴が絡んできたり、3人で遊園地に出かけて配信を理由として、両手に花の楽しい描写も続きます。

 作者の妄想全開で書かれていくニコ生ライフは、フラグだらけ。ゆえに次はどうなるんだろうとページをめくるのがもどかしくなります。何せ、前半の段階で家に帰ってきたら千遥が母親と話している。逆に千遥の家にいったら、メイド服で出迎えとか。巧翔の母親は、ぼっちな息子に「友達」が出来たことで大喜びですが……母親が「友達」の部分を強調しているのが、なんか妙にソソるわけです。

 この作品、みんなが知ってる「ニコ生」を超絶綺麗に描く青春物にしているわけです。ともすれば「こんな美味しい話あるかよ」「リアルの欠片もない」などと非難されそうです。でも、そうならないのは物語のテンポのよさ。

 この構成力と妄想力で、今後どんな作品を描いていくのか、とても楽しみな作家です。
(文=大居候)

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