『ワンダリングワンダーワールド』大人気テーマパークの裏の顔は“陰鬼”を封じるための結界―!? PEACH-PIT初の少年漫画誌連載

2016.06.08

 日本だけでなく、世界中で人気のあるテーマパーク。そこは夢の国であり、現実を離れて楽園に迷い込める不思議な空間だ。しかしもしそこが、“何か”を封印するためのものだったならどうだろう──? 『ワンダリングワンダーワールド』(作:PEACH-PIT/角川書店/以下『ワワワ』)の物語はそんなところから始まる。日本最大のテーマパーク「ワワワ」は、国内でも大人気の夢と不思議の王国。修学旅行のハイライトとして「ワワワ」を訪れた草壁鉄心(くさかべ・てっしん)は、とある事件をきっかけに予想だにしない現実に巻き込まれていく。

 大雑把に言うと、「ワワワ」は陰の気の塊である「陰鬼(いんき)」を封じるために作られた「鬼輪(おにわ)」という結界である。海上の人工島に建てられたパーク内は、それぞれ世界観の違う4つのエリアで構成されていて、アトラクションはもちろんのこと、キャストたちによるショーやパフォーマンスも大人気。しかしそれは仮の姿であり、実際にはゲスト(客)たちの「陽気」を巡らせることで20年間鬼輪を順調にまわしてきたのだった。しかし3年前のとある出来事により輪にほころびができてしまい、“こちら側”に出てくる陰鬼が少しずつ増え始めてきたという。

 そこで鉄心。彼は大の掃除好きで、「ワワワ」に来て一番感激したのも掃除係の見事な仕事ぶりという、もはやマニアの域。ここに来るまでは兄と2人で平和に暮らしていた鉄心だったが、ワワワの裏の顔を見てしまったからにはタダでは帰せないと言われてしまう。彼は陰鬼を引きつけやすい体質の人間で、超レア級の「ワンダー」と呼ばれる存在であるという。それゆえにパーク内で働く「オニワ番」になることを提案される。一度は断った鉄心だったが、どうしても心の中にもやもやしたものが残っていた。「使命と覚悟のない者は、元の世界に帰ったらいい」と言われ、少しガッカリした自分がいるのは何故だろう……?

 やがて「ワワワ」で働くことを決意する鉄心。昼は清掃員、夜は「オニワ番」の囮として働く彼だったが、同じチームの伊吹はまだ鉄心を認めてはいない。鬼の子なのに何故かオニワ番をやっているサイは、ワンダーであるという鉄心に何か不思議な違和感を感じているが、それが何なのかははっきりしないまま、夜の「ワワワ」に大ピンチが訪れる。キャストのチーム、一重・二花・三葉たちと連携して巨大鬼を倒すが、その主に操られたサイは暴走し、鉄心の心臓を貫き食ってしまった。どうやらサイは3年前の事件に関係があるようだが──?

 PEACH-PITと言えば『ローゼンメイデン』や『しゅごキャラ!』などを思い出す人も多いだろうが、『ワンダリングワンダーワールド』は初の少年漫画誌連載という触れ込みで開始した、男女問わず楽しめる作品だ。これまで多くの作品を手掛けてきたPEACH-PITのお2人だが、ただの娯楽漫画に終始せず、命の重みや人と異形のつながりなどの深い作品を描いてきた。今回の「ワワワ」も、まだまだ明らかにされていない秘密も多いが、人間と鬼との奇妙な関係を取り扱い、兄弟の絆や友情などもふんだんに盛り込まれている。これまでの作品を好む人はもちろん、PEACH-PIT初読という人でもすぐに世界観に引きこまれていくだろう。

 1巻のラストで早々に死んでしまう鉄心だが、そこは一応主人公のようなので、その後伊吹と暴走から解けたサイが協力して、鉄心を生き返らせる方法を探りだす。それは人を生かすことも殺すこともできるという「殺生石」という伝説の石で、パーク内のどこかにある「隠れリック」の中にあるというが……。伊吹とサイに、知られていない「隠れリック」の場所を教えてくれるジェラート売りのポチャ子さん、アイスクライマー希(のぞみ)が筆者は個人的に推しである。パーク内でも男女問わず人気者で、揉め事は何でも解決してしまうのぞみん。ぽっちゃりな見掛けとともに、心もふくよかな愛すべき女性キャラである。ただの甘いもの好きのデブではないです、愛らしいぽっちゃりです!

 そして再び緊急事態発生! なんと今度は鉄心の遺体が何者かによって持ち去られたという。これでは殺生石があっても鉄心を生き返らせられない。新たなオニワ番も加わって、鉄心の遺体探しが始まるが、なんとなく鉄心の兄が臭うような……。いや、幼馴染のさやかも……? 2巻ラストの紙屋敷のセリフが気になる。謎は深まる中、鉄心の行方は?! そしてサイと伊吹はどうする?! サイの本当の正体や人型の鬼、「3年前」というキーワードなど、気になる伏線がてんこ盛りなので、それぞれの回収を望みながら、ワクワクしたテーマパークアクションを楽しみたい。
(文/桜木尚矢)

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング