さらに、その翌年には筆者が俳優として参加した映画『11・25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2011)の完成披露上映会がテアトル新宿で盛大に開催された。上映後に企画された、監督・若松孝二とのアフタートークでは、森と評論家の鈴木邦男が並んで登壇。
それは、三島の自決に直結する最も重要なシーンを巡る議論の最中だったと記憶している。あの若松を前にして、誰もが次の言葉を探してしまうような気まずい展開の中での出来事だった。唐突に、森がメジャーな映画製作会社への批判とも取れる辛辣な問題提起を突きつけながら、関係者一同や、客席に居並ぶマスコミ各社の取材陣に向かって、それらの疑問を呈した瞬間のことだった。
それまでの重苦しい空気がまるで嘘だったかのように、緊張の糸が途切れた客席は突如沸き立ち、末席で目立たぬように座っていた筆者も思わず大きな拍手を贈ってしまい、爽快なカタルシスを覚えずにはいられなかった。
そんな緊迫した場面での瞬時の機転や、胸のつかえが降りるようなシャープな発言こそが、森達也の真骨頂なのだろう。
今週末、森の15年ぶりとなる新作ドキュメンタリー映画『FAKE』が、馴染み深いユーロスペースにて遂にロードショー公開を迎える。
そして今夏、筆者の古巣とも呼べるロフトプロジェクトのLOFT9 Shibuyaが、同じKINOHAUSの1階にオープンするのだ。
そんな偶然の一致に、人生の不思議な巡りあわせを実感している。
筆者は今年3月、ロフトプロジェクト代表の平野悠が主宰するインターネット・ラジオの生放送に出演し、その放送中にゲスト出演された森と数年ぶりの再会を果たした。ところが、同じくゲスト出演された宮台真司と鈴木邦男の両氏から、『FAKE』の完成度にまつわる賛辞が次から次へと飛び出し、もうマスコミ試写を観ずにはいられない精神状態に陥ってしまい、放送直後の森に、4月1日のマスコミ試写への参加を思わず直訴してしまった。
今回、筆者は信頼する仕事仲間とともに『FAKE』のマスコミ試写に参加し、以下の2人によるレポートを掲載しようと考えた。
アニメやマンガばかり観ているドキュメンタリー童貞諸君に捧ぐ! 衝撃はラスト12分間だけじゃない映画『FAKE』のページです。おたぽるは、映画、その他、昼間たかし、佐村河内守、A、A2、FAKE、ゴーストライター、森達也、熊篠慶彦の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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