『ひゃくにちかん!!』(那多ここね) エロゲ的導入部だが、登場人物のイイ人感にほっこり。

『となりのヤングジャンプ』にて好評連載中の、那多ここね『ひゃくにちかん!!』(集英社)は、「それなんてエロゲ?」な要素がいっぱいだけど、ハートフルなストーリーです。

 物語の主人公・秀人は、どこか冷めた雰囲気の高校生。エロゲーからラノベまでありがちの、テンプレな冷笑系主人公です。

 そんな彼は、両親が海外出張することになり、3カ月間だけ自宅で一人暮らしをすることになります。3カ月間、誰にも邪魔されることなく自由!

 でも、そうは問屋が卸しませんでした。知らない間に、両親が一緒に出張する森田さんの娘・ちほを預かることにしていたのです。

 単に預かるとはいっても、ここには重大な問題がありました。というのも、その娘・ちほは幼稚園児だったのです。

 いきなり、置き手紙で幼稚園児を預かることを知らされた秀人。おまけに、幼稚園の送り迎えからお弁当づくりまで、すべての世話をしなくてはならなくなったのです。

 すると、秀人はラノベとかの主人公にありがちなチート能力があって、家事でもなんでもなんとかなるのか。いいえ、そんなことはありませんし、助けに来る美人の幼なじみもいません。すべてが、年相応の男子高校生の能力なのです。

 そんな男子高校生のところに、幼稚園児の娘を預けるなんて、森田さんはほとんどネグレクトか何かとしか思えません。

 しかし、両親が海外出張してしまっている状況で悩んでもいられません。こうして、秀人とちほの3カ月間、約100日に及ぶ奇妙な同居が始まるのです。

 いやいや、ロリと同居なんて、その手の趣味の人にとっては、とても甘美に聞こえるでしょう。でも、実態は大変です。なにしろ、秀人がまずやらなくてはならないのは、一緒に暮らす3カ月間が、どれほど長いものなのか教えることからだったのですから……。

 それでも、この秀人が冷笑系主人公にも関わらず、妙にイイ人ゆえなのか、物語はとことんハートフルです。とりわけイイ人感が出るのは、お弁当をめぐるエピソード。初日だけはと店で買ってきたパンで済ませたのですが、それが原因でいじめられているのではないかと、ガクンと落ち込んでいるのですから。

 ところが、この幼稚園の先生は、秀人が園児だったときから知ってるし、友達はみんな、ちほのことが大好きでと、環境がうらやましいほどにハートフルなのです。

 それだけじゃなく、周囲の大人たちも友人も、とことん2人に優しい。

 とりわけ、ちほの大の仲良しのかなみにいつもついてくる「執事」の田中さん。この人、若いのに人間ができていて「大人がいいといったら学生さんは遠慮しなくていいんです」と、さまざま世話を焼いたりしてくれます。

 物語の中で、いま何日が経過しているのかいまいち判然としないのですが、物語が進むにつれて登場人物が増加しつつ、物語は進んでいく形式の様子。今後、どのようなキャラクターが登場してくるのか?

 今回が初単行本という那多ここね氏ですが、ちょっと変わっているけど、イイ人感あふれるキャラ造形に長けている様子。今後の展開がとても気になります。
(文=大居候)

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