「アイドルとヲタク」の関係に迫った『アイドルとヲタク大研究読本』を現役アイドルヲタクが読んでみたら

 続いてはヲタクのタイプ別分析。

 個人的には、「いるいるこういう奴!」と思うことしきりで、本書の核となる部分であることは間違いないだろう。また、それぞれのタイプの特徴を言い表した表現もユーモアに満ちており、書き手の鋭い観察眼に感心した。

 例えば、アイドルに本気で恋をしてしまう「ガチ恋」系の特徴では、「深夜になると、ツイッターに謎のガチ恋ポエムを投下する(朝にはツイ消ししている)」。曲を中心にアイドルを楽しむ「楽曲派」では、「SweetSとTomaton’Pineについて語りだすと小一時間は止まらない」。レポを行うことを中心とした「レポヲタ」は、「すぐ【速報】と付けてツイッターに投稿する。別名『ナタリー気取り』」など、この項は本当に共感できる部分が多かった。

 ちなみに、私は、複数のアイドルを同じように応援する「DD(誰でも大好き)」と、父兄のような暖かい目線で見守る「紳士・父兄」にあたるのではないかと自己分析している。

 そして、なんといっても面白いのは、ぺろりん先生によるイラストコーナーだ。味わいのある絵と、独自の目線でアイドル現場を切り取った4コマ風イラストは、アイドルの気持ちもヲタクの気持ちもよくとらえられていて、クスリとしながらも、現場での自分の行動をあらためて見直す機会にもなった。

 正直、アイドルの研究本的なものは、好みの問題が分かれるので、共感できるものとできないものの差が激しい。

 しかし、本書に関しては、アイドルとヲタク両方の目線で書かれている点、編集者の好みよりも、より客観的にアイドル現場というものを分析している点などが貴重で、現役のアイドルやヲタクのみならず、少しでもアイドルというものに興味がある人たちに読んでもらいたい一冊になっている。

 最後に、この本のテーマでもあり、今大きな問題ともなっている「アイドルとの距離感」。本書を一通り読み込んでみれば、それはアイドル側から見ても、ヲタク側から見ても人それぞれ、さまざまだということがわかる。

 当然、人と人との関係性であり、またそこにビジネスが介在している以上「ここからここまで」というような制限はあるべきだろう。

 ただ、その範囲内で、自分と、そして応援するアイドルの心地よい距離を見つけていくのが、双方にとって幸せな関係だと思う。

 好きなアイドルが変わったり、増えたりした場合は、その都度心地よい関係を探っていく。極論すればアイドルとは、その関係性自体を楽しむことでもあると思う。

 手の届かないところにいるアイドルに、届くか届かないかわからないメッセージを送ってみるのもいい。それはまるで、宇宙のどこかにいるであろう未知の生命体に向かって飛ばされた、ボイジャーのレコードのようなロマンあふれる楽しみ方だと思う。

 逆に、身近で若いアイドルのイベントに通い、励ましの声をかけてあげるのもいいだろう。実は私などは、たぶんこれに近い。独身で、子どももいない中年のヲタクにとっては、まるでわが子の成長を見守るような喜びと慈しみを味わうことができる。

 そう、アイドルを追いかけるというのは、何も特別な趣味ではないのだ。

 ガチ恋をする若者がいて、父兄のように見守るおじさんがいる。詳しくはわからないが、男性アイドルを追いかける女性だって同じではないか。まるで、アイドルの現場は今の社会の縮図のようだ。

 そこで問題が起きているとすれば、それはアイドルだからではなく、社会の中に潜在的にある問題が顕在化しているにずきない。

 問題をすり替えて、ともすれば弱い立場にいたり、偏見を持たれがちな世界にいる人をたたくだけでは、何も解決しない。

 この本に書かれているように、人には多様性があり、それぞれの関係の中で生きている。

 人を傷つけてはいけない。相手の気持ちを思いやらなければいけない。

 そんなシンプルなことが、アイドル界を分析することで、あらためて見えてくる。

 そう考えるにいたった、きっかけとなる一冊だった。
(文=プレヤード)

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