【新連載】アイドルの処方箋 第1回

あの日、戸惑ってしまったファンの好意への対応…「私が地下アイドル業界から肯定されたように、私もファンの人を肯定したい」

 Twitterを開くと、脈絡のない唐突な質問が届いていた。

 地下アイドルから返信が欲しくて、日がな一日、簡単な質問を投げ続けているアカウントはよく目にする。たいてい、アイコンが当たり障りのない風景写真やイラストなので、中の人がどんな人物なのかはわからない。プライベートでTwitterを使っている女の子からは不審がられるだろうし、有名人は倍率が高くて返信がもらえないので、地下アイドルはちょうどいいのだろう。彼らのタイムラインにはただ、さまざまな女の子への質問が流れていて、「好きな色はなんですか?」とか、「好きな食べ物はなんですか?」とか、誰でも返信できるような内容になっている。

 私はあまり、こういうリプライには返信をしない。わざわざライブまで足を運んでくれるファンの人に、申し訳ない気がするからだ。以前は興味本位で返信することもあったけど、また延々と質問が続くだけで、相手のことが知れるわけでもなく、ましてや実際に会えることもなかった。もちろん私が返信しなくなっても関係なく、彼らは地下アイドルたちに質問を送り続ける。最もリプライがもらいやすい方法として。

 それはどんな気持ちだろうと思う。

 私は私で返信しないことへの罪悪感が、日々積もっていくのを感じる。

 Facebookで友人申請を送ってきた男性が、承認した途端Facebook上で、地元の人に私を“友達”だと紹介していた。Facebookにはグラビアアイドルや、地下アイドルにばかり友人申請を送る男性がよくいる。

 私はFacebookで友人申請があれば承認するし、Twitterでフォローされればフォローバックする。関係者しか相互フォローしない地下アイドルも多いが、そうするとむしろ、「なんでフォローしてくれないの?」という関係者が出てきて、ややこしいからだ。

 しかし、Facebookは面識ある同士で利用することが前提で作られている。私に友人申請してくれた人も、恐らく他人から申請を受ける時は、誰でも承認するわけではないのだと思う。私は、私を「友達」だという面識のない男性の投稿を見て、途方もない気持ちになった。ひとりひとりを深く知れないことに、罪悪感が募る。そんなことで憂鬱になっていたら、続かない仕事であることもわかっている。

 時には、インターネットでの交流を通じて、ライブまで会いに来てくれる人もいる。それは、とてつもなく嬉しい。実際に会いに来ることは難しいけれど、ずっと応援してくれている人達ともSNSでは繋がっている。きっと一度も交流したことがなくても、胸の中で応援してくれている人もいるのだろうと思う。インターネット越しでも、きちんと伝わるほどの思いが、どれだけ強いものかと思うと、嬉しくもあり、きちんと応えられているか不安でもある。

 その分私は、顔を合わせられるファンの人たちとは、できる限り真摯に付き合いたいと思っている。

 地下アイドルとしての私のコンセプトは、「アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人に向けて活動する」ことで、これは昔からなんとなくどこにいても自分の居場所ではないと感じていた私が、この職に就いて、居場所を見つけたことがきっかけになっている。

 私がこの業界から肯定されたように、私もファンの人を肯定したい。

 ひとりひとりに言葉で伝えるのは難しくても、ライブハウスや、同じ空間で私を見た時に、「この人だったら受け入れてくれそう」だと、感じてほしい。

 実際、ライブに来てもらうというのは大変な行為で、チケット代だけでなく、その人の時間や、ほかにも存在していた今日という日の過ごし方を、私に費やしてもらうことになる。とは言え、いちいちそんな気持ちを態度に出されたら、相手も気負ってしまうと思うので、なるべく自然体でいるようにしている。裏の顔も表の顔もなく、自然体でいることは、私にとって地下アイドルを長く続ける大事なコツだ。

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