【新連載】アイドルの処方箋 第1回

あの日、戸惑ってしまったファンの好意への対応…「私が地下アイドル業界から肯定されたように、私もファンの人を肯定したい」

 今月21日、東京・小金井市で20歳の女性が、ファンの男性に刺傷される事件が起きた。この原稿は、事件発生以前に書いたものである。

 事件以降、ひっきりなしに続いている取材の中で、私が繰り返し伝えているのは、まさにこの原稿に書いた内容であった。

 過度に熱心なファンを、否定することで刺激してはいけない。

 そして、この文章全体に込められている願いは、地下アイドルによって癒やされ、満たされるファンと、ファンに認められて幸せになる地下アイドルが少しでも増えることである。

 事件についてはさまざまな要素が複雑に絡み合っていて、地下アイドルとして、ひとりの人間として、伝えたいことが山ほどある。それに関しては、次回きちんと記すつもりだ。

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 地下アイドルが好きだ。見返したい、成り上がりたい、愛されたい、願いをかける彼女たち。

『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(小社刊)を出版した後、「自分自身のことをもっと書かないのか?」と、散々聞かれた。確かに私は、自分のことを語るのが苦手だ。だからというわけじゃないけれど、書籍には私が見てきた地下アイドルたちのことを中心に書いた。それでも、半分くらいは自分のことも書いたのだけど、自分語りが苦手になったのには理由がある。

 この業界は入れ替わりが激しい。

 女の子が願いを胸に飛び込んできては、諦めて去っていき、また新しい女の子達が飛び込んでくる。だからこの業界は常に女の子たちの新鮮な願望で熱く満ちている。

 私は7年前になんとなくこの業界に入って、存外に居心地がいいので残ってしまった。最初はファンを増やすために、熱心に自己主張していた時期もあった。しかし、3年続ければベテラン扱いされる世界で、いつまでも駆け出しの頃の勢いは保てない。私は次第に、自己主張の強い駆け出しの女の子たちに気圧されて、どんどん自己主張が苦手になっていった。

 その代わり私は、自分自身のことよりも、この文化の面白さや魅力を、文化の外へ伝えることに興味を持った。『潜行』にほかの女の子たちのことを書いたのは、私なりの自己主張で、自分のことを書いたのと同じことだと私は思っている。

 地下アイドルは面白い。

 ただ、私は『潜行』を出版した後も、「どうして彼女たちは地下アイドルを頑張るのか」の答えが見つけ出せずにいる。それは駆け出しの頃の自分に対しても、同じ気持ちだ。彼女たちはどういう気持ちで、若い時期の貴重な時間をこの活動に賭けているのか。当連載ではその答えに少しでも近づけるように、私が体験したこと、見て思ったことも、頑張って綴っていこうと思う。

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