子ども向けアラビア語学習アプリはISの“軍国教育アプリ”だった!?

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「Businessinsider」より。

　ゲームに限らず充実の一途を辿るスマホアプリだが、教育や学習系のアプリの人気も高まっているのはご存知の通り。こともあろうに現在の国際社会の最大の懸案事項のひとつであるIS（イスラム国）が先日、子ども向け学習アプリをリリースしていることが話題になっている。

■ISの“軍国教育”アプリが登場!?

　戦時下の無視できない社会的損失の一つに、児童教育の脆弱化がある。公教育の損失もさることながら、戦いの真っ只中では親たちも忙しく、子どもの勉強に付き合う時間がなかなかとれないのだろう。まさに戦時だからこそ、ますます教育関連アプリが重要な役割を持ってくるのだ。

　シリア情勢を中心とした戦乱が今なお収まる気配を見せない中、イラクとシリアで放送されているIS（イスラム国）のラジオ放送「アルバヤン（Al-Bayan）」が先日、ISのIT部門が子ども向けの学習アプリを配信したことを報じた。

『Huroof』というタイトルのそのアプリはAndroid版のみで、ISが運営する「Telegram」チャンネルで配信されているという。Telegramはセキュリティの高さが特徴で、昨今ユーザーが急増しているメッセージアプリである。この『Huroof』も暗号化された高いセキュリティのデータとして配布されているため、IS関係者以外の者が入手するのは難しいという。

『Huroof』はISの支配地域の子どもたちに、アラビア語の読み書きを教えることを目的とした学習アプリなのだが、イスラムの楽曲やジハーディスト特有の言い回しや慣用句なども多く散りばめられており、アプリを通じてムスリムらしさを養成できる内容になっているという。加えて、銃や戦車、ロケットなどの軍事に関する言葉と画像も多く含まれているという。アプリの中で簡単な算数の問題を解くコーナーでは、銃の数を計算する問題も登場している。

　子どもたちに早いうちから武器に慣れさせようというIS上層部の意図が透けて見えるのは明らかだろう。ISはこれまでにもいくつかスマホアプリを配信しているが、子ども向けのアプリはこれが初めてだという。長引く戦乱の中、ISの“軍国教育”がますます低年齢化しているのかもしれない。

■ニューヨーカー3500人“処刑リスト”が公開

　ISのIT部門やサイバー攻撃部門の脅威は以前から指摘されているが、数週間前にはやはりこのTelegramを通じてアメリカ人の“処刑リスト”が意図的に公開されている。リストに載っているのは米ニューヨーク・ブルックリン在住の“ニューヨーカー”約3,500人だ。

「ユナイテッド・サイバー・カリフ国」と称する、IS関連のハッカー集団が公開したこのニューヨーカー“処刑リスト”は、人名と共に住所と電話番号が記載されており、その大半は実際に実在する人々と住所であるため、ニューヨーク市警とFBIが警戒を強めている。ISのハッカー集団がどうやってこれらの個人情報を入手したのかはまだよくわかっていない。

　昨年11月のフランス・パリ同時多発テロ事件の衝撃がまだまだ忘れられない今日、今回の“処刑リスト”公開もまた、ISがテロの標的を一般市民へとシフトさせていることのあらわれであるという指摘も多いようだ。ISがフランス以上に敵対視しているのはもちろんアメリカであり、ニューヨークを舞台にしたテロ計画が練られていること自体には何の不思議もないと言えるだろう。

「Newsweek」の記事によれば、“処刑リスト”に名前が載った人々の反応は意外にもさまざまであるという。もちろんリストに載った多くの人は恐れているということだが、名前を載せられたブルックリン在住のアーティストは「今全米を震撼させているトランプ候補のほうがよほど脅威」とユーモア(!?)を利かせている。ISがサイバー空間で次にどんなことをしでかすのか、実際のシリア情勢と同じくらい頭の痛い話であることは確かだ。引き続き各所でサイバーセキュリティの強化が求められている。
（文／仲田しんじ）

【参考】
・Businessinsider
http://www.businessinsider.com/isis-android-app-kids-2016-5

・Newsweek
http://www.newsweek.com/civilians-isis-3500-strong-new-york-hit-list-mixed-inclusion-457542