「1分1秒、どこを切り取っても美しい」世界が拡がっていた舞台『みちこのみたせかい』レポート

1605_michiko_03.jpg井村解役の藤本結衣。

 古橋演じる未知子の孫、井村解を演じる藤本結衣も、負けず劣らず素晴らしい演技をしていた。解は、人並み外れた頭脳を持つ高校生。頭の良い学生役と言えばクールなキャラクターを想像しがちだが、解は未知子を救いたいという気持ちでひた走るタイプ。筆者は当初、解が「知識階級の独善性」の象徴に見えた。その周囲を寄せ付けない態度、熱を持った天才を藤本は見事に表現していた。普段の藤本の愛らしさ、気さくさを感じさせず、役に溶け込んでいたように思う。ただ人を想う気持ちの強さだけは、藤本本人と相通じるものがあるのではないだろうか。そして物語の中で見せる、解の心の変化も注目すべきポイント。2日目のゲネプロでは、感情が高ぶって泣いてしまったというエピソードも、藤本自身そして解という役柄の変化なのかも知れない。

1605_michiko_04.jpg未知子の親友であり、長年研究を続ける科学者、織部絹江役の長谷川 怜華。

 織部絹江役の長谷川怜華も、また舞台経験が多いとは言えないが、それを感じさせない演技だった。本作では75歳の研究者という役柄。実年齢とはあまりにもかけ離れた設定にも関わらず、特殊メイクやかつら、年寄りらしい衣装を身につけることなく舞台に上がっていた。研究者としての凛とした姿をしっかりと演じていた。また、未知子の親友として全力で彼女を助けたいという信念が劇中を通して伝わっていた。

1605_michiko_05.jpg倉橋玉枝役のAKANE(福田朱子)。

 未知子が憧れる生物学者、倉橋玉枝を演じるAKANEの「ひとり舞台」も見どころの一つ。公演の記者発表会で「独り占め」のシーンがあるとのことだったが、その言葉の通りの長台詞。言葉一つ一つを丁寧に投げて来られると、観客の心の中も彼女に独り占めされることだろう。やはり彼女の立ち振る舞いも、功名な学者然としていて貫禄さえ感じた。倉橋博士と未知子との出会いのシーンも印象に残る。

1605_michiko_06.jpgジャーナリストの車谷千鶴子を演じる梅田悠(左)。

 アリスインプロジェクトの舞台には4度目の登場となる梅田悠の演技も見事というほかない。これまでアクション劇での「ボスキャラ」ポジションとは違っても、彼女が現れるとキュッと舞台全体が締まる感じがする。そして、演じる車谷千鶴子の苦悩が、客席に沁みるように伝わってきた。梅田自身も「お客さんが一番感情移入し易いんじゃないかと思う」と語っていたが、それは表現力あってのこと。また、「科学や医療の進化が正しいのかリアルに考えさせられる」作品になっていると語った。今回の座組は初舞台というキャストが多い中で「初心に帰ることができた」という彼女の謙虚な姿勢にも拍手を送りたい。

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