「1分1秒、どこを切り取っても美しい」世界が拡がっていた舞台『みちこのみたせかい』レポート

 5月8日に千秋楽を迎えたアリスインプロジェクトの舞台『みちこのみたせかい』。本公演前日と初日5日に、風組・光組それぞれの公開ゲネプロが行われた。

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 正直これ程までに考えさせられる作品になるとは、思いもよらなかった。

 アリスインプロジェクトの舞台と言えば、殺陣やガンアクション、そしてSFの要素を取り入れ、人との関わり合いの中で、成長する主人公や周囲の人間を描いた作品が多い。

 もちろん、今回もアイドルや若手女優が集まったガールズ演劇には違いない。大きな違いと言えば、アクションの要素を排除し、純粋な会話劇になっていることだろう。そして主題の重さ。「認知症」という単語を公演概要の中に見た時、明るさを感じることはなかった。また、脚本の麻草郁氏の描く世界が奥深さ故に難解にならないか、いささかの心配もあった。しかし、敢えて若い女性陣が演じることによって、スッと染み込んでいくような感覚を覚える作品となっている。加えて「科学の進化」という要素もウエットになりがちなテーマの感触を良い方向に変えているように思う。演出の細川博司氏の言葉通り「1分1秒、どこを切り取っても美しい」世界が、舞台上に拡がっていた。そしてやはり、アリスインプロジェクトならではのキャスト陣に注目して観るという楽しみ方もあるだろう。

1605_michiko_02.jpg主演・敷島未知子役の古橋舞悠。

 主演の古橋舞悠は、朗読劇などの経験もあるが、本格的な舞台への出演は今年に入ってから。単独での主演は今回が初となる。「初単独主演」と打ち込んで、何か間違っていないかもう一度確認したくなった。それだけ見事な演技だったからだ。これには「お世辞ではなく」という一言を頭に付けて言いたい。

 古橋を良く知るファンから叱られそうだが、筆者が持つ彼女のイメージはもっと濃い、アクの強い女の子だった。ところが敷島未知子の役柄は病弱で、穏やかなイメージの女性。冒頭の会話の柔らかさに面喰った。同じ未知子でも、場面によって「14歳の未知子」と「74歳の未知子」の演じ分けの必要があり、古橋はそれを器用に口調や声の重さ、姿勢や歩き方で表現仕切っていた。

 立ち振る舞いの見事さは、もちろん細川博司氏の演出の功でもあるだろう。古橋自身も度々口にしたように、演者の所作については細川氏が丁寧に指導してくれたそうだ。ただ、それをキッチリと表現できるかは演者次第。17歳という若さで、さらに舞台経験がさほど多くない状況で、これだけのものを見せられる古橋の今後が楽しみだ。久しぶりにベタ褒めしたい役者に出会ったように思う。

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