『貞操逆転世界』（天原）男子みたいに性欲丸出し女子は可愛い！

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『貞操逆転世界』（海王社）

　独特なのにリビドーがインクに詰まりまくっている絵柄で、性欲丸出しの女子が、ガンガン迫ってくるのにキュンキュンしてしまう。天原『貞操逆転世界』（海王社）は、いろいろと新しい目覚めを与えてくれる一冊である。

　連作形式で描かれる表題作「貞操逆転世界」は、タイトル通りな世界観。主人公がいつの間にか紛れ込んでいたのは、男女の性欲や貞操観念だけが真逆になった異世界だったのである。すなわち、学校では女子が男性ヌードがいっぱいのエロ本を「たまんねえなあ～」と回し読みして、男子の側が「やだなあ女子」と言ってる。当然、援助交際も女が男を買うものである。

　そんな世界で主人公は「売男（ビッチ）」になることを決める。で、さっそく話を持ちかけたのは、クラスの三つ編み女子の川島さん。もちろん処女。言うまでもなく「処女」と書いて「どうてい」と読むのが、この世界である。当然、初めて。しかも3,000円でヤラせてくれるというわけで、がっつき方が半端ないのだが、この描き方が超絶技巧。

「本当に3000円でやらせてくれるのよね？」
「本当にセックスするわよ？　いいのねっ？」

　と、ハアハア、ドキドキしながら緊張しまくってるのである。その、今にもむしゃぶりつきたいけど、どうしていいかわからない。でも、性欲の爆発が押さえられない姿が、独特の絵柄にものすごくマッチしているのである。

　そして、心置きなく何回もした後の惚けた幸せそうな顔もまた……。この単行本、後半に作者の初期作も収録されているのだが、そちらは線が固め。作者がいかなる経緯を経て、このリビドー溢れる独特の絵柄にたどり着いたのかはわからぬが、自分がもっとも興奮する絵柄に至るまでの過程がよく見えて興味深い。

　そして、読んでいるうちに、この性欲が男子な女子たちが、ものすごく可愛くなってくるのである。とりわけ、第1話のヒロインである川島さんは、とことん可愛い。2話以降は脇にまわるのだけど、セックスしたいあまりに必死にバイトをしている姿が描かれるのである。

　おそらく作者は、この情景がツボなんだろう。

　でも、読者もそれは興奮する姿だというのに気づくんじゃなかろうか。最終的に、一晩中買い切ったりしてもまだ我慢できず、主人公がほかの女の子に買われている姿に嫉妬しまくる川島さんには、陥落する読者も多いだろう。

　表題作の全3話の連作は性欲丸出し女子のキチ可愛さに、とことんハメてくれる。でもその後に収録される短編「妄想陵辱」は、これまた驚きの作品である。

　興味本位で初めて買ったエロ本で、レイプされることに目覚めちゃった女の子を描く作品。まず、冒頭から女の子がドキドキハアハアしながら、書店でエロ本を買っているところからスタートして、レイプされる妄想でオナニーしているシーンを描きまくるのである。いや、それだけならば単にエロいだけなんだが、ちゃんと日常シーンでも今日の妄想を考えているシーンを挿入したりして、読者に対してハマりっぷりをグイグイアピールしてくるのである。しかも、一歩間違えればギャグになりかねないラストシーンへとつながる構成力もまた、優れている。

　そんな我が道をいく作者は、ほかにどんな作品を描いているのかとネットで検索してみたら「33歳独身女騎士隊長」とか、やっぱり独自すぎるタイトルの作品が！　近年希に見る独自色を放つ描き手。今後も、どんな新しいツボを読者に教えてくれるのか、もっと作品を読みたい！
（文＝ピーラー・ホラ）