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【特撮・特撮&ロック】

モノブライト出口博之の特撮自由帳(1)『仮面ライダーゴースト』

2016.05.08

『仮面ライダーゴースト』23話あらすじ紹介より。

 英雄が英雄たる所以は、絶対的な「個」を持っているから。希代の変わり者でありながら強烈な個性で人々を魅了し、文字通り命を燃やしながら信念を貫き通したからこそ、後世に語り継がれる英雄と呼ばれる人物になる。

 先輩や目上の存在よりも遥か上、歴史を彩る偉人に「君は共に戦うに足る人物なのか?」「生き方を共感できるか?」と問われ、その問いに自分の信念で応えていくタケル。タケルよりも遥かに成熟した眼魂の存在により、彼の心の弱さや未熟さが浮き彫りになっています。眼魂と仮面ライダーの関係性が人間と道具ではなく、「人間と人間」の関係になっている。眼魂ひとつひとつに「個」があり、それぞれの意思のもと戦っているのです。

 仮面ライダーゴースト、仮面ライダースペクターが最終フォームに変身するきっかけも使用者が「決意や覚悟を決めた瞬間」であり、心の成長を眼魂が認めたときになります。

 眼魔の世界からやってきた第3の仮面ライダーネクロム。彼が使用する変身アイテム「メガウルオウンダー」の起動音声は抑揚のない人口音声(『仮面ライダー555』のファイズギアに近い)になっていて、眼魔の世界を象徴するような描かれ方がされている部分からも、人間の世界と眼魔の世界の違いが示されています。

 物語上「人間の世界(個)=正義」、「眼魔の世界(没個)=悪」と描かれていますが、元々眼魔の世界は一人の指導者(大帝と呼ばれる)が「怒りや憎しみがない、誰も死ぬことはない世界」を目指し構築した世界であり、徹底した管理と「個」を排するイデオロギーは理想郷を実現するためのもの。この本質は、人間の世界でいうところの「英雄の行動原理」であると同時に「誰かのために行動する優しさ」でもあります。眼魔の世界が人間の世界に干渉する理由は「理想郷の拡大」として、人間の世界を眼魔の世界と同じにすることです。

 しかし、盲目的に眼魔の世界を信じていた住人(ネクロム、キュビちゃん、音符眼魔など)が自我に目覚め始める辺りから眼魔の世界でクーデターが起こり、眼魔の世界における理想の裏側にある内情と暗躍が動き出します。没個の世界の住人が他の誰でもなく「個である自分のため」に行動する。それぞれに心が生まれ、揺れ動き始めた、いうことなのです。

 人間の世界の住人タケルの目的は「99日以内に眼魂を集めて生き返ること」です。生き返ることは、すなわち自分のため。タケルにとって戦いは、他の誰でもない完全に自分のためのものです。しかし、他人を顧みない心の持ち方や行動だった場合、力を貸していた眼魂(英雄)はタケルの元から離れてしまう。自分のためではなく誰かのために戦うことができるか、が重んじられています。これは眼魂に宿った英雄たちの行動を見ていても明らかです。誰一人、自分のために戦わず、タケルに戦闘面、精神面の両方から手助けし共闘しています。

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