マンガはまだまだ売れる!? 出版不況の荒波を迎え撃つカリスマ書店員“仕掛け番長”に訊く「マンガの売り方」

■“衝動買い”を起こさせるのはリアルな店舗

――売り上げの低迷、WEB通販サイトの隆盛と実店舗が厳しい中で売っていく工夫はほかにありますか?

栗俣 どこもやっていることですが、女性はやっぱり“特典に弱い”っていうのはものすごくあるので、独自特典やサイン本をやれば売れますね。あとは、特大ポスターやPOPなどで“コレが今面白いよ”っていうのをわかりやすくオススメして、手に取るタイミングを作ってあげるだけですね。

――やはり見せ方が大事なんですね。

栗俣 Amazonとかって作品のタイトルを検索して商品にたどり着くじゃないですか。つまり、“目的買い”なんです。それに対して“衝動買い”をさせるのはやはり店舗だと思うので、その衝動を起こす仕掛けをするのが大事だと思います。先ほどのプラットフォームっていうのもそこに準じていて、買う衝動を起こさせるための場所でもあるんです。WEBでは不可能なことなので。

――それは確実にWEBとの差になりますね。書店とアニメの関係についてもお訊きしたいのですが、マンガ原作のアニメが数多く放送されている今、アニメのヒットを受けてマンガも売れるとか、アニメが書店での動きに影響を与える、ということはあるのでしょうか?

栗俣 言い方が難しいんですけど、すごく意識はしますが、事前のヒット予測が当たることがまずないのがアニメなんですよね。今期も何が当たったかというと、集英社が全然推さなかった『双星の陰陽師』。これが予想に反して大当たりしてるんですよ。アニメ第1話終了後、重版が追いつかないほど当たっている状態です(4月中旬現在)。こういう現象は書店ではよくあって、ちょっと前だと『がっこうぐらし!』(芳文社)が当たることは誰も予想してなかったですし。あと『琴浦さん』(マイクロマガジン社)も。演出なのか監督なのかわからないんですけど、アニメの出来によって当たる・当たらないがすごく出ます。

1604_kurimata_05.jpg「前クールだと『おそ松さん』がスゴかったです。いろんな出版社から復刻された『おそ松くん』は先陣を切った竹書房の文庫が売れましたね。あとはアニメ誌がスゴかったです」

――ご自身でもヤマを張ったりとかするんですか?

栗俣 張りますけど、やっぱり観てみないと。本当にアニメの出来次第なので、マンガの出来ではないんですよね。いくら原作が良くても。逆に言えば原作が悪くても。なかなか難しいですね(苦笑)。正直、版元さんも見えてないので。

――では、最近こういう傾向のマンガは売れやすいなというのはありますか?

栗俣 難しいんですけど……“ワン・アイデア”ものは強い。例えば、入れ替わりものとか、さっきのタイムトラベルものとか。一番強いのはデスゲーム系で、確実に売れますね。例えば、デスゲーム系でも毎回毎回何かしらのゲームが起こって、その中で何人かが死んでいくスタイルのものはもう数多く出てますけど、必ず売れる。ちなみに「売れてるな~」と思うと原作者が全部一緒とかよくあります。

――デスゲーム作家みたいな(笑)。

栗俣 あと主人公がヘタレ男子のものも当たりやすいですね。ある程度、数を乗っけても売れてしまいます。あとは、30代女性が主役の恋愛ものは強いですよね。

――最近のマンガの帯は「30代◯◯」「30歳◯◯」とか多いですよね。30代をすごく推してて。昔はこんなになかったですよね。

栗俣 多いです。30歳って、実は特に女性が急激にマンガから離れるって言われている歳なんですよ。逆に言うと30代女性の層がくっついて来ちゃえば爆発しちゃうんですよね。女性が食いついたものはヒットするっていうのは、『弱虫ペダル』(秋田書店)とかがいい例だと思います。「女性が『チャンピオン』追うぞ!」とか誰も思ってなかったんですよね。

――そうなると、昔のマンガの流行り方と違ってくるのでしょうか?

栗俣 違いますね。いかに脳内でBLになるかが大事だなと(笑)。先ほどのヘタレ男子系も男性向けマンガの話です。しかも、ヘタレ方がちょっと昔のヘタレとは違うんですよね。いわゆる『新世紀エヴァンゲリオン』のシンジくんみたいなヘタレではないんですよ。

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