マンガはまだまだ売れる!? 出版不況の荒波を迎え撃つカリスマ書店員“仕掛け番長”に訊く「マンガの売り方」

1604_kurimata_04.jpg三軒茶屋店リニューアルオープンの情報を聞きつけたマンガ家から届いたお祝いの色紙たち。これでもまだ全体の半分程度しか展示できていないという。

――栗俣さんは、これまでもマンガのライブペインティングやサイン会などのイベントを精力的にやられてきたんですけど、今までの売り場とどのような違いがあるのでしょうか?

栗俣 例えば、今まで自分がまったく読んでいなかったものに触れる瞬間っていうのはあまりないと思うんです。本屋で初めて出会うのはその表紙くらいで、作品の内容に触れる瞬間はないと思うんですね。そこで、作家さんに原稿を売り場で描いていただき、その様子をプロジェクターに映し出す“コミックライブ”というイベントを店内で行い、作品に興味を持った人がその場で本を手に取れるようにしました。サイン本については、通常だとだいたい新刊にサインをして販売する形が主流なんですけど、これをすべて1巻目に、しかもほとんどのサインを絵入りでしていただいて1万冊くらい集めて販売をしました。業界で本を作っている人たちが全員何かしらの形で関わる状態を売り場で表現し、お客様がお店に来たときに、自分もその中に参加しているような感じで買い物ができるというところを目指しています。

――マンガが持つ熱量の中に読者も巻き込んで一緒に盛り上がるということですね。

栗俣 はい。例えば、読者さんが作家さんにつながるというのはWEBではよくありますけど、それをリアルでやってしまうんです。ほかにも“編集部が棚を作る”という新しい実験も行っています。僕は書店員という立場で、絶版になった文庫をプロデュースして表紙や帯を作り直して再販するみたいなこともやっているんですけども、その逆で「編集部の人が書店の棚をプロデュースしたらどうなるか」というのをやってみたり。そういう意味で、業界全部がつながるプラットフォームとしてのコミック売り場を作れたらと。

――書店員でありながら復刊企画で出版業も手がけていて、野球のエージェント的な動きというか、ちょっと新しい気がします。

栗俣 書店の生の動きって編集さんや版元さんには伝わらないじゃないですか。実は売れる本の答えって書店によく転がっているんです。今、このタイプの表紙を出せば100%売れるのにっていうのがあるんですね。それを編集段階で組み込める書店員がいなかったんです。それを初めてやったのがたぶん僕で、元々数百冊しか売れなかった本が復刊文庫で何万部も売れてしまったのは単純に初版時の時代に本が合っていなかったこともあります。やはり“今だから売れる”っていうのがあって。例えば、今だったら恋愛ミステリーで、しかもタイムトラベルものだったら確実に売れるよね、みたいな。

1604_kurimata_06.jpgSF小説『弥勒戦争』(著:山田正紀/角川春樹事務所)の「復刊文庫」では、仏像をモチーフとした表紙だったものを、女子高生と廃墟をメインに据えたライトノベル風に。

――今は恋愛ミステリーでタイムトラベルものなんですね。

栗俣 それが10年前に出ても売れてないんですよね。それをリメイク……というか表紙をイマドキの売れる表紙にしてあげれば、売れる本になるんです。簡単なロジックなんですけど、それが実は出版社にとってすごく難しいことになってしまっているんです。そこの部分をコンサルティングしてあげるだけで売れる本はまだまだ作れると思っていて、それをやっているのが僕なんだと思います。

――今売れる表紙とは何ですか?

栗俣 表紙でいうと、今だと爽やか系のイラストは売れますね。女性が好むようなイラストはやっぱり手に取られやすいなと思いますし。あと、どシンプル、ですね。文字だけとか。

――ラノベじゃない文庫の小説もアニメっぽい絵の表紙が増えていますよね。

栗俣 そうですね。ライトノベルほどアニメに近付けてしまうと、手に取る人が限られてしまうんですけど、今はもう小さい子供たちが触れる講談社の青い鳥文庫とか集英社のオレンジ文庫とかがどんどんアニメ絵になっているので。自然と大人になっても手に取りやすくなっているというのはあると思います。

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