イラストレーターへの暴言に多くのネット民が救いの手を差し伸べるも「わざわざ金払う神経が分からんわ」とイラスト価値は廃れるばかり

1604_ill.jpg「給料BANK」公式サイトより。

 璃独楽という香港人の絵師に送られたメッセージが「ひどすぎる!」「イラストレーターを何だと思ってんだ?」と大きな反響を呼んで問題となっている。

 問題の始まりは今月の下旬、「絵描きます! イラストのお仕事募集中‼」とプロフィールに書かれた璃独楽氏に、munizoというユーザーがイラストをお願いするも、相手から料金を請求されて逆ギレ。「料金がかかるならbio(プロフィール)に記載しろよ。イラストレーターの屑がこの野郎…」と暴言を吐くという事件が発生した。

 これにはさすがに黙っていられなかったネット民。璃独楽氏の丁寧な語り口や、腰の低さもあって、「ちゃんと仕事募集って書いてあんじゃねえか!」「無料でやってくれるって考えてること自体がおかしいだろ」「ボランティアじゃないんだ、イラストレーターは」と励ましの声、munizoを非難する声が多かったが、実情、イラストレーターの世界はお金を稼ぐのが非常に困難な世界である。

 イラストレーターという言葉だけ聞くと、「華々しい」「儲かりそう」「特技を仕事にできて羨ましい」といったイメージを抱きがちだが、実際はそんなに甘くはないようだ。イラストレーターたちからは、「低収入」「仕事がない」「働けても雑用ばかり」といった意見がネット上を騒がせている。実際、年収はピンからキリだが、就職・転職サイトなどの調査によると、平均で年間200~300万程度、そもそも会社に身を置くという働き方が稀なため、フリーランスで仕事を取ってくるスタイルで、正社員などという雇用形態は希少な部類という不安定な職業。その上需要過多のせいで、仕事が割り当てられるイラストレーターはほとんどおらず、アルバイトを兼業してつつましやかな暮らしを送っているという人も少なくないようだ。

 2015年に話題となった、RPG風のカッコイイイラストで職業紹介をするサイト「給料BANK」では、弁理士を弁慶風の武士に見立て「技術者はただ創造あるのみ。私たちはその技術を守っていくのが仕事です」と心に響く文言を載せ、陰陽師風のイラストで描かれたコピーライターは「一文字一文字を大切にし、時には破壊をするお仕事です」と、将来の夢がまだ決まっていない若者を鼓舞する素敵な言葉が並ぶなか、少女に見立てられたイラストレーターの文言はというと「私たちは大人になっても芸術家でいられますか?」と、今のイラストレーター業界の実情を一言で言い表し、この意味深な文言に「泣きそうになった」「私もこのままイラストレーター続けられるのかな?」「続けたいさ、俺だって!」と悲観するイラストレーターが続出した。

 イラストレーターの価値が下がるにつれて、イラスト自体の価値も下がり続けている昨今。ネットを少し探れば、フリーのイラスト素材が見つかり、「イラストにわざわざ金払う神経が分からんわ」「イラストって金払うもんだったんだね、今知ったわ」と軽視されつつある。今回の事件もそうした一人ひとりの屈折した価値観が生み出してしまった一例なのだろう。

 璃独楽氏はその後、よほど今回の事件がショックだったのか「今はご依頼受け付けておりません」とプロフィールに記載している。これからのイラストレーター業界の行く末もネットを利用したものが主流になっていくのだろう。心無い発言や厳しい現状を前に、夢見るイラストレーターが意気消沈してしまわなければ良いのだが……。

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