『はだかの林檎』山崎紗也夏はやっぱりトラウマを描かせればピカイチ!

apple0427はだかの林檎(1)』(日本文芸社)

 山崎紗也夏は常にインパクトのある作品を描いてきたマンガ家である。かつて「ヤングサンデー」(小学館)に連載していた『マイナス』は、ギャグマンガかと思っていたら、次第にヒロインのトラウマがえぐり出される展開が続き、連載途中では人肉食まで登場。あまりのインパクトに強さに、掲載号が回収という騒動まで起こっている。

 さまざまなジャンルで必ずや心をえぐられるような描写をしてきた山崎。最近はドラマ化もされた『サイレーン』(「モーニング」掲載)を経て、ソフトになったのかと思いきや、そんなことはなかった。

 今回紹介する『はだかの林檎』(日本文芸社)は「漫画ゴラク」に連載中のお色気作品。

 でも、もちろん単なるお色気作品のわけがない。毎回、ページのほとんどがベッドシーンだというのに、読んでいるほうが心をえぐられる作品になっているのだ。正直、雑誌連載中はさまざまな作品の中の1本だからまだよかったが、単行本になると一気に読むのは苦しい。それくらいインパクトの強い作品だ。

 物語のヒロイン・沢村林檎は34歳のOL。いつも寝ている相手は、会社の部下である風間裕介27歳。物語は、2人の3度目のセックスから1話完結方式で描かれる。

 2人は、恋愛関係にあるわけではない。とりわけ林檎はそう。仕事帰りに一緒に飲んで、なりゆきでそうなってから、いつも自分から誘っているだけ。求めているのは快楽のためだけのセックス。林檎が過去の恋愛の失敗がそうしているのか、深入りを避けているようなことが、少しだけ匂わされる。

 途中で裕介が「結婚しよう」とは言うのだけれど、林檎がオッケーしようと思ったら、裕介が寝ていたために、関係は絶妙なまでに微妙な状態。そんな状況で、気持ちよくなりながらも林檎の頭の中では、いろんな考えがグルグルとめぐる。その内面描写のネームが、ものすごく痛いのである。

 なにせ服を脱ぎながら「ここでがっついたら……結婚にしがみついてるいきおくれた女と思われる」「受け身になったら急にかわいこぶっていると思われる」なんて、考えているわけである。

 それどころか、家に上げた回では「女が男を家に上げたらオンナはもうオトコのもの(※註:と、思ってると思ってる)」とか。いや~女の心は複雑ですね~とか、評論的に納得してなんていられない。なんだか、よくわからないものがグサグサと刺さってくるのである。

 こうした過程を経て、物語はトラウマゆえに順序を間違えた林檎が、トラウマも乗り越えて恋愛の歓びを感じることができるようになるわけである。でも、そんなハッピーエンドが待っているとしても、作中で描かれるトラウマ描写は、やっぱりヤバ過ぎるのだ。こっちのほうが人肉食よりよっぽど危険だよと、誰もが思うのではないだろうか。
(文=是枝了以)

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