鈴木マサカズ『銀座からまる百貨店 お客様相談室』次第にクレーマーが愛しくなるお仕事マンガ 

 鈴木マサカズ『銀座からまる百貨店 お客様相談室』(講談社)は「モーニング」の伝統たる、一風変わったお仕事系マンガの新星だ。

 タイトル通り、物語の舞台は銀座の百貨店。そのためか、銀座周辺、日本橋や丸の内あたちの書店に妙に入荷している冊数が多いのは気のせいだろうか……。

 この作品の舞台である、お客様相談室。そこは、一流デパートのクレーム対応部署である。なるほど、そんなマンガが銀座やら日本橋で多数売られているということは「うんうん、わかる」と思っている読者が、多いということなのか? だとしたら、とても嫌な世の中である。

 そもそも、デパートっていうのは、懐に余裕があるときに地下で高い食べ物を買うところ……くらいの貧しい認識しかない筆者。ゆえに、まずデパートで買い物するような金持ちがクレーマーになることが、にわかに信じがたい。「金持ちケンカせず」ってのはウソなのか……?

 物語は、お客様相談室に配置された若い社員・木洩田一郎を狂言回しとして、さまざまなクレーマーたちの姿を描いていく。

 お釣りを2円間違えただけで、自宅に訪問して土下座しても、怒り続ける老人。日本から出たことないけど、日本の事なかれ主義がいやなので「2年前に買った毛皮が虫に食われた」とか来店して怒る婦人などなど。

 この作品、原案協力に苦情・クレーム対応アドバイザーという、おそらくオンリーワンな肩書きを持つ、関根眞一が名を連ねている。つまり、ここに登場するクレーマーたちは、半ば実在の人物ということだろう。

 とことん迷惑なクレーマーたち。でも、読んでいるうちに、このクレーマーたちに興味が沸いてくる。だって、家に呼びつけても、こちらから出向くにしても、時間も使うし怒っていたら体力も消耗してしまうじゃないか!

 最近じゃ、Twitterなどを用いて気軽に企業へをぶちまける、お手軽な人々が大勢いる。もちろん、そうした方法を使えば拡散・炎上して、相手先企業が土下座してくる可能性も高いだろう。でもね、ここに登場するクレーマーに比べると、それは明らかな手抜きとしか思えない。それに、問題にケリがついてもネットで拡散してしまえば、収集がつかなくなってしまいそう。

 その点で、目の前で怒るクレーマーというのは、けっこう礼儀を心得た人に思えてしまうのである。

 だから、そうしたクレーマーに対して、お客様相談室の面々は、決して「二度と来るな」と塩を撒いたりはしない。さまざまな手段を駆使して、相手の溜飲を下げ「またのご来店を心よりお待ち申し上げております」と深々と御辞儀するのである。

 音楽がCDよりもライブのほうが楽しいのと同じく、クレームもTwitterより対面のほうが楽しいわけだな。まあ、クレームなんて受けたくないけど。
(文=是枝了以)

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