『シャープさんとタニタくん@』(仁茂田あい) これからの企業PRの形なのか? 

 連載開始以来、話題になっていた、仁茂田あい『シャープさんとタニタくん@』(リブレ出版)が単行本となった。

 この作品は、企業の公式Twitterアカウントなのに、なぜかゆるいツイートや他社との絡みで話題になったシャープとタニタの「Twitterアカウント」の擬人化マンガである。

 そもそも、擬人化もなにもTwitterなんだから人間がやってるんだろう、というのは野暮。あくまで、Twitterアカウントを元に擬人化しているのである。

 しかも、出版社は女子の夢を叶えまくることでは定評のあるリブレ出版。かつ、作者は数々のBL作品で支持を集めているのだそうで、ガチでよく絡む。もちろん、掲載誌はpixiv内の『クロフネZERO』なので、全年齢向けだけれども、本当にゆるふわによく絡む。イケメンチックに描かれた2人(?)の、ゆる~い絡みは、女子を萌えさせる要素でいっぱいなのは間違いないだろう。

 でも、だからといって、この作品が女子向けの作品なのかといえば、そうではない。むしろ、男子のほうがワクワクするネタが結構多いので面白う。

 それは、絡むだけでなく、企業が公式に協力している作品なので宣伝も欠かさないからである。

 冒頭のカラーページでは、シャープのオーブン電子レンジブランド「ヘルシオ」の名前の由来は「減る塩」という、思わず手を打つコネタを教えてくれる(筆者が知らないだけだったら、すまぬ)。思わず、シャープの商品サイトを検索したのだが、脱油・減塩調理の機能を推しまくっているので納得。かと思えば、実際のTwitter大喜利でシャープが呟いた「ラテカピュター」が写真入りで登場。

 これは1970年代後半に各社がこぞって開発していた、ラテカセ(ラジオ+テレビ+カセットデッキ)に負けじとシャープが送りだした、ラテカセにコンピューターまでついているという製品。まったく売れなかったわけですが、現代のスマホやタブレットPCには、だいたいの機能が盛り込まれていると考えると、その先進性は評価されてしかるべき。そんな、何物にも囚われない、よい意味で無謀な社風が、ゆるふわなTwitterへと至っているのだろうとポジティブに解釈できる。

 そんな2人の絡みに、セガやキングジムの公式アカウントも擬人化されて絡んでくるわけですが、とりわけセガは妙なBL色の強さを。グイグイ押してくるセガの勢いに押されて、タニタさんは1人でプリクラを撮影しにいくのだが……そもそも、セガの最近の推しはプリクラだったのか! と、あの「うずまき」の時代でセガとの付き合いは終わっていた筆者は思った次第である。

 ともあれ、全年齢に向けて企業の商品をPRする新しい形として機能しそうな作品。少なくとも企業イメージがよくなることは間違いない。とりわけシャープは買収交渉でさまざまな問題が報道されているわけだけれど、この作品を読んだら、むしろ同情しちゃうよなと思った。
(文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/)

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