『ストレンヂフルーツ』の恐怖……読んでいてゾクリとするミステリー!

2016.04.17

『僕だけがいない街』(KADOKAWA)や、『ひぐらしのなく頃に』(講談社)のような、読み終わったときにゾクリとした感覚が残る作品、それが『ストレンヂフルーツ』(KADOKAWA)だ。『世にも奇妙な物語』やTVアニメ『紙兎ロペ』(共にフジテレビ系)でも脚本を務めている放送作家のアサダアツシが原作・脚本をつとめ、石川樹がマンガを担当している今作。帯に踊る、「2016年、禁断のミステリーマンガ登場!」の文字に恥じないストーリーになっている。

 10年ぶりに故郷の十文字町に帰ってきた女子高生・椿は、幼馴染である美佳・萌子の2人との再会を喜んでいた。しかし、十文字町は十文字“タウン”へ変わり、町を生まれ変わらせた実業家・権藤周太郎の“5”の数字が町中に描かれ、夜になるとバニラやオレンジといった奇妙な香りの霧が発生する、不思議な場所へと変化していた。

 十文字町に戻ることが決まってから、毎晩とある少女の悪夢に襲われていた椿は、ボウリング場にいたおじさんたちから10年前に起こった「少女失踪事件」の話を聞き、忘れ去っていたもう1人の“幼馴染”の存在を思い出す。……少女の名は「杏奈」。失踪事件の被害者であり、4人は仲のよい“幼馴染だった”はずなのに、美佳も萌子も、杏奈を “いなかった存在”として扱おうとする。

「少女失踪事件」について調べようとする椿。しかし、その話題に触れようとすると、そのたびに美佳も萌子も、それ以外の町の人々も異常に過敏な反応を示す。そしてその事件を調べる謎の人物・高原や十文字暑に異動してきたばかりの刑事・草野、なぜか椿に執着する権藤の娘・真夜を巻き込んでストーリーは進んでいく。

 いったいこの町に何が起きたのか。誰が関わっているのか。椿にとって、本当の味方は誰なのか。さまざまな謎を残したまま、第1巻は続きが気になる展開のうちに終える。

 第1巻を読んだだけでは、何もわからない。だが、暗い闇が広がっており、椿を包み始めていることは確かで、なんともいえない不安な気持ちになる。激しいアクションがあるわけでもなく、人々の動きや心理描写だけで表現しているからこそ、より怖いのだろう。夢で見た光景が現実なのか、現実で体験したはずのことが夢なのか、わからなくなっていく。この先の展開がまったく読めない、でも世界に引き込まれる。心から、早く続きが読みたくなる作品だ。

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