ファン待望のFPS『オーバーウォッチ』、女性キャラのお尻強調“勝利ポーズ”を削除&修正!

2016.04.09

『オーバーウォッチ』公式サイトより。

 格闘対戦ゲームなどで、勝利を収めたキャラクターが得意満面に見得を切る“勝利ポーズ”はゲームのひとつの“萌え”要素だが、この5月に発売予定の対戦シューティングゲームに登場する女性キャラクターの勝利ポーズがジェンダー表現的に“不適切である”として修正が施されることになった。

■女性キャラのお尻が強調された“勝利ポーズ”が削除&修正

 オンラインゲームの『ディアブロ』などで有名な、米PCゲーム会社大手のBlizzard Entertainmentから、同社初めてのFPS『オーバーウォッチ(Overwatch)』(PC版、PS4版、Xbox One版)がいよいよ5月24日にリリースされる。ファンには待望の本作、昨年11月には希望者を募ってベータ版のテストプレイも行なわれ、21人にのぼる登場キャラクターの詳細も明らかになった。

 いずれも個性豊かなビジュアルと動きを備えたキャラクターたちの中に、攻撃的な女性キャラクターであるトレーサー(Tracer)がいる。6人のオフェンスキャラクターの1人であるトレーサーは、紹介動画などで見てもとても快活な印象を受けるのだが、彼女が銃撃戦で勝ったあとの勝利ポーズが、彼女とゲーム全体を“損ねる”ものであると批判を受けたのだ。

 情報サイト「Polygon」などに掲載されているトレーサーの修正前の勝利ポーズとは、後ろ姿の状態で背後を振り向くという“振り向きポーズ”で、確かにピッタリした戦闘スーツのお尻が強調される格好になっている。そしてトレーサーのこのポーズが、テストプレイヤーのフォーラムで“セックスシンボルになっている”と批判されたのである。

 同フォーラムのメンバーであるFipps氏は、『オーバーウォッチ』の世界観もキャラクターも素晴らしいものであると賞賛していながらも、このトレーサーの“振り向きポーズ”が彼女とゲームを貶めてしまっていると長文の書き込みで批判。これがフォーラム内のみならず、ゲーム好きの間で賛否両論の大きな反響を巻き起こし“炎上”したのだ。そして『Overwatch』のディレクター、ジェフ・カプラン氏は、さまざまな意見があることは認めながらも、Fipps氏の主張を認めトレーサーの勝利ポーズを変更すると発言。このカプラン氏の表明にも、また多様な意見が寄せられた。

 今となってはこのトレーサーの“振り向きポーズ”が、動きとしてどれほど性的なニュアンスを含むものだったのか、直接確認することはできないが、Blizzard Entertainment側のこのすばやい対応は、やはり昨今のビデオゲーム業界の努力目標になっている、“ダイバーシティー”への配慮ということだろうか。ビデオゲームとゲーム業界がメジャーな存在になった今日、制作側にもゲーマー側にも“これまでの感覚”が通用しなくなる事態を迎えているのは確かなようだ。

『オーバーウォッチ』トレーサーのゲームプレイ動画 「PlayOverwatch」より

■ファンからの要望は圧力団体よりも強い力を持つ

 もちろん、今回のBlizzard Entertainmentの判断を批判するゲーマーも多い。しかし少なくとも欧米では“ジェンダー表現”の規制、自主規制の流れは確実に強まっていると言えそうだ。

 昨年、カプコンは“ストリートファイター”シリーズ新作である、『ストリートファイターV』の中に登場するレインボー・ミカが自分のお尻を叩くポーズを、あまりはっきりとは見えないように調整、さらに女性キャラクターの股間を仰ぎ見るアングルになる部分を、股間が見えなくなるように修正した。開発中のゲームプレイ動画で話題になっていたレインボー・ミカのお尻叩きポーズだが、「Polygon」の記事によればアメリカの審査機関「ESRB」との密接な協議の末に自主規制の判断が下されたようである。

幻となった“お知り叩きポーズ”「YouTube」より

 おたぽるでも取り上げてご存知の向きも多いとは思うが、先日発売されたばかりの『DEAD OR ALIVE Xtreme 3』は欧米では発売が見送られている。同作は格闘ゲーム『DEAD OR ALIVE』シリーズに登場する女性キャラクターたちとの南国でのバケーションのひとときを堪能する内容のゲームで、女性キャラの“開放感”に満ちた水着姿なども目を惹き、何かと批判の矢面に立たされていることから、欧米での販売は回避されることになった。しかし、英語字幕が入った同タイトルが香港経由で欧米のファンに届けられ、目下好評発売中という皮肉な現象も起っている。

 しかし今回の『オーバーウォッチ』に関しては、決して外部の圧力で修正が施されたのではなく、あくまでもファンのゲーマーの意見を汲み取って行なわれた判断だというのが、この2タイトルとは少し事情を異なるものにしているかもしれない。クールで快活なトレーサーのキャラクターを台無しにしたくないというファン(主に女性)からのリクエストだったと考えれば、やはりBlizzard Entertainmentの判断も妥当のようにも思える。実際にゲームをプレイしているファンからの要望は、圧力団体よりも強い力を持っているということになるだろうか。
(文/仲田しんじ)

【参考】

・Polygon
http://www.polygon.com/2016/3/28/11321138/overwatch-tracer-pose-removal

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